スーパーに行けば実感するあの“じわじわとした値上げラッシュ”の中で、「少しでも生活の足しに」と期待する声も多かったでしょう。
確かに、今の日本で生活が楽になっている実感を持てている人は、そう多くないはずです。
でも、以前にも現金給付があったことを思い出しませんか?
そう、2020年のコロナ禍。
あの混乱の中、全国民に一律10万円が支給された給付金です。
あのときの10万円、何に使いました?
2020年、あの特別定額給付金――つまり「コロナ給付金」と聞けば、医師であるあなたも記憶にあるはずです。
当時、多くの方が収入減に直面し、その10万円が生活費の足しになったケースも多かったでしょう。
しかし一方で、「ようやくの息抜き」とばかりに旅行や外食、最新家電の購入に使った方もいました。
それはそれで、一時的な満足感を得るには十分だったのかもしれません。
ところが、実際のデータを見てみると、もっとも多かった使い道は――「貯金」でした。
日本人の“貯金信仰”は、やはり根強い。
使わず、ただ「取っておく」という安心感を大切にするのが、日本人らしいとも言えます。
でも、ちょっと立ち止まって考えてみてください。
その10万円を、別の形で未来に向けて活かした人たちがいます。
そう、投資です。
給付金の使い道で分かれた未来—— 消費 vs 貯金 vs 投資
あの10万円、どう使ったかで、実はその後の「お金の未来」が大きく変わっていたかもしれません。
まず、「消費」に使った人。旅行に出かけ、美味しいものを食べ、最新ガジェットを手に入れた——その瞬間の満足度は高かったはず。
でも、得られたのは体験やモノだけ。金銭的リターンはゼロ。
心のリフレッシュにはなったけど、資産形成の観点では足踏み状態です。

次に、「貯金」に回した人。
日本人らしく堅実な選択ではあります。将来の不安に備えて、口座にそっと眠らせる。でも・・・・・その預金金利、ほぼゼロですよね。
増えないどころか、実質的にはインフレで目減りしているとも言えます。
そして、「投資」に回した人。ここが明暗を分けました。
コロナ後、世界中でお金がジャブジャブに流れ、企業業績が回復。
株式市場は急騰。S&P500も日経平均も、2020年半ばから上昇し、2022年には一旦調整に入ったものの、2023年から続伸しました。

それだけじゃありません。不動産も、金(ゴールド)も、遅れて上昇。
つまり、現金以外の資産を持っていた人ほど、資産が増えたんです。

もちろん、生活防衛資金としての貯金も、人生を彩る体験も大事。
でも、そこに「投資」という選択肢を加えるかどうかで、未来の資産構造はまるで違ってきます。
特に、むき出しの資本主義であるアメリカでは、コロナ禍をきっかけに“持つ者”と“持たざる者”の格差が一気に拡大しました。
アメリカに見る“投資格差社会”
アメリカではコロナ禍が“お金の階層”を一気にあぶり出しました。
米国政府が支給した給付金の使い道を見てみると、その差は歴然です。
一方、高所得者層の多くはその給付金を「投資」に回しました。預金ではなく、株式市場という“もう一つの戦場”へ。
なぜそんな差が生まれるのか? それは、そもそもアメリカ人の金融リテラシーと資産構成にあります。
米国人の金融資産に占める現金比率は、たったの13%。
この差は、「401k(確定拠出年金)」などを通じて、長年にわたり投資文化が育まれてきた結果でもあります。
しかし、裏を返せば、投資をしていない層はこの10年での資産インフレにまったく乗れなかった。
住宅価格の上昇、物価高騰、給与の伸び悩み――購買力は急速に落ち込み、生活はますます苦しくなる。
結果として、アメリカの貧富の差は“指数関数的”に拡大しています。
そしてこの流れ、実はもう日本にも上陸済みです。
日本のコロナ給付金(10万円)は、低所得世帯ほど生活費に充当され、
一方で資金に余裕があった層、そして早くから「投資の意味」に気づいた人たちは、そのお金を株に、不動産に、暗号資産に――資産形成として活用していました。
中には、たった数年で「億り人」となったケースも。
この熱は新NISAの爆発的な普及にも表れています。
すでに2兆円超の資金が動き、投資は“他人事”ではなくなってきました。
そして今、物価高が加速。日本のインフレ率はついに3%超、アメリカを上回る水準に。

特に食品の値上がりは顕著で、家計の負担は静かに、でも確実に増え続けています。
にもかかわらず、銀行金利はたったの0.4~0.5%。
「貯金さえしていれば何とかなる」時代は、もう終わったのです。
あの10万円、私はこう使った
2020年、あの10万円のコロナ給付金を受け取ったとき、私はそれを“金(ゴールド)”に換えるという選択をしました。
正直、額としては大きくない。でも、「このばらまかれたマネーをどう扱うかで、未来が変わるかもしれない」という、そんな感覚があったのです。
なぜ「金」だったのか?
それは、歴史的なマネーサイクルの流れを知っていたから。
通貨量が急激に増えれば、まずは株式などの資産価格が上がり、時間差でインフレがやってくる――これは過去の経済史が何度も示してきた法則です。
実は、すでに私はコロナショックで割安になっていた日本株には手を出していたので、分散投資の意味でも「金」という異なるアセットクラスを選んだという背景もありました。
あの当時、金の価格は1グラム6,000円台。
今、2025年時点では15,000円を超える水準にまで上昇しています。

もちろん、当時「これが正解だ」と確信していたわけではありません。
でも、消費でもなく、現金のまま寝かせるのでもなく、「何かに備える」という意識でお金を動かしたことが、後になって大きな意味を持ったのです。
あの経験を通じて、私は強く実感しました。
お金は、手にした時点で価値が決まるのではない。
どう使うかで、その価値は大きく変わる。
そして実際に、世界中の資産価格が上昇した数年後、日本でもいよいよ生活者レベルで物価上昇が実感される時代が始まりました。
インフレという「見えない税金」
インフレがじわじわと進行するなか、目に見えない形で私たちの資産が削られている――そんな実感はありませんか?
実はこの“削られる感覚”、経済学的にも的を射ていて、物価上昇はしばしば「インフレ税」と呼ばれます。

インフレとは、単純にモノの値段が上がる現象。でも、その本質は逆で、「現金の価値が目減りする」ということです。
つまり、財布の中身は変わらなくても、買えるものがどんどん減っていく。
それってまさに、静かに課税されているようなものですよね。
「でも給料も上がってるでしょ?」という声も聞こえてきそうです。
確かに2024年、日本の賃金上昇率は4〜5%台と、表面的にはインフレ率(約3%)を上回っています。
しかし、ここに大きな落とし穴が。
生活に直結する食品価格は16%も上昇しており、日常生活の圧迫感はむしろ強まっているのです。
特に医師の場合、診療報酬制度の抑制により、他業種ほどの給与上昇が見込めないという現実も。
つまり、“見た目は裕福でも中身はすり減る”という状態に陥りやすい。
高収入職であっても、インフレの波に無防備でいれば、実質的な購買力は確実に削がれていくのです。

では、どうすればこの「見えない税金」に対抗できるのか?
答えはシンプルです。インフレに強い資産を持つこと。
預金金利が0.5%程度では、物価の上昇にまったく追いつけません。
だからこそ、株式や不動産、コモディティ(金やエネルギー資源など)といった実物資産への投資が、今の時代に求められているのです。
インフレに強いのは“資産”を持つ者
インフレ時代において、真に強いのは「収入が多い人」ではなく、“資産を持っている人”です。
そしてその資産の質が、購買力を守る鍵になります。
たとえば、株式。特にグローバルに展開する企業の株は、物価上昇に連動して製品・サービスの価格も上がりやすく、それに伴って企業利益も増加する傾向があります。
つまり、増配や株価の上昇という形で、現金の価値が目減りしても資産としての価値が守られるのです。

さらに、金(ゴールド)などのコモディティをポートフォリオに加えることで、株式市場が大きく下落したときの“ディップ(落ち込み)”を和らげる効果も期待できます。
不確実な時代には、こうした“守りの資産”を一部組み入れることが、結果的にリターンを安定させる戦略になります。
また、医師の間でも人気のある不動産投資。これも基本的にはインフレに強い資産です。
家賃収入は物価にある程度連動しやすく、土地や建物自体の価格も上昇が見込まれます。
ただし、借入(レバレッジ)を使う分、物件選定やリスク管理の目利きが必要であることは言うまでもありません。
最も大切なのは、これらの投資によるリターンが、単なる資産拡大ではなく、インフレ下でも“購買力”を維持するための盾になるという視点です。

給与が伸び悩む今、働いて得る収入だけで生活水準を保ち続けるのは厳しくなっていくでしょう。
だからこそ、お金を“使う”のではなく、“働かせる”という感覚が、これからの医師にとって不可欠なマインドセットとなってきます。
資産を持つ者だけが、インフレに打ち勝つ。
その差は、すでにじわじわと現れてきています。
まとめ:医師こそ投資という「もう一つの収入源」を
日々の診療に追われる中、投資のことまで手が回らない――そんな声もあるでしょう。
でも、だからこそ必要なのが、「お金に働いてもらう仕組み」です。
限られた時間のなかで、もう一つの収入源=資産からのリターンを築くことは、これからの医師にとって必須のリスクヘッジとなります。
インフレが進むこの時代、もはや貯金だけで資産を守るのは現実的ではありません。

医師という安定した職業だからこそ、「守るだけでは守れない時代」に備える力が求められています。
株、不動産、金——選択肢は多様ですが、共通して言えるのは、“賢く資産を持つことで未来の購買力を守る”ということ。
アメリカではすでに、投資をする者としない者で資産格差が大きく広がっています。
それを「遠い国の話」と片づけるのではなく、“明日の日本の姿”として自分ごとに置き換える視点が重要です。
医師という専門性を武器に、人生の土台を築いたあなたへ。
その上に乗せるべきは、“時間に縛られないもう一つの収入源”かもしれません。
投資は特別な才能ではなく、意志ある一歩から始まります。
まずは「投資をする側に回る」ことを選ぶ――それが未来のあなたを守る、大きな選択になるはずです。
自分で資産を築いてきた著者だからこそ書けた一冊。新NISAやiDeCo、積み立て投資だけでなく、お金の心理学(一番大切!)や節約・副収入・株以外の資産まで幅広く網羅しており、資産形成1年生に最適の本です。