- 2025年、米国は9〜10兆ドルの国債を高金利で借り換え
- 利払いは年1兆ドルを突破し、財政圧迫が深刻化
- ドル安やインフレの加速リスクも現実味を帯びる
- 米国株一極集中は為替差損のリスクが高まる
- 実物資産(例:金)による資産防衛がカギに
米国債務問題が再燃|ドルの信認に揺らぎ?医師投資家が知るべき背景とは
中東情勢やロシア・ウクライナの紛争が終息に向かい、世界の緊張がようやく緩み始めたように見えます。
そんな矢先、今度はアメリカの「債務問題」が再びクローズアップされています。
「ドルは基軸通貨だから、アメリカの借金なんて問題にならないでしょ?」という声も聞こえてきますが、果たして本当にそうなのでしょうか。
医師として日々多忙な皆さんのために、今回はこのアメリカ債務問題の本質を、ごくシンプルに、でも核心に迫って解説していきます。

2025年に迫る米国の「1450兆円借り換え」問題とは?高金利下のリスクに注目
2025年、アメリカ政府は約9〜10兆ドル(約1,450兆円)という巨額の借金を借り換える必要があります。
これは、アメリカのGDP約28兆ドルのうち、実に36%にあたる金額です。
ここで大きな問題となるのが「高金利環境下での借り換え」です。
つまり、過去の低金利時代に発行した国債を、今の高い金利で再発行しなければならないということ。
これは、家計でいえば住宅ローンを超高金利で組み直さざるを得ないようなもの。
当然、利払いコストが激増し、国家財政を圧迫するリスクが高まります。
この先、ドルの信認や世界経済の構造にどう影響するのか――医師という安定した職業を持つ私たちも、資産運用の目線で無関心ではいられません。

なぜ今アメリカは高金利なのか?背景にあるコロナ禍の国債大量発行とインフレ
今回借り換え対象となる米国債の多くは、コロナ禍に発行されたものです(図1参照)。
図1:米国政府債務残高推移
あの頃、金利は2%以下と超低水準で、経済支援の名目のもと、連邦準備制度(FRB)は国債を大量に購入。
その結果、大量のドルが市中に供給されました。
この「マネーの洪水」が、数年後の現在にインフレとして跳ね返ってきているのです。
FRBはこのインフレを抑制するため政策金利を引き上げ、現在は4%前後という高金利環境となっています。
つまり、米国政府は「2%以下の金利で借りた借金を、4%以上の金利で借り換えねばならない」という、まさに倍返しの状況に直面しているのです。

利払いが年間1兆ドルに急増|米財政を圧迫する構造的な債務スパイラルとは?
その影響はすでに表面化しています。2021年以降、米国の利払い額は急増し、ついに年1兆ドル(約145兆円)を超えました(図2参照)。
図2:米国政府利払額推移
これは国防費や医療費を上回る水準で、米政府の財政運営を大きく圧迫しています。
財政赤字が続く限り、新たな借金は不可避。
つまり、利払いはさらに増え、雪だるま式に債務が膨らんでいく構図です。
こうした背景もあり、トランプ前大統領がFRBに対して「利下げ」を強く要求しているのは、政治的なパフォーマンスではなく、財政的な現実に根ざした動きだとも言えるでしょう。

ドル安リスクと米国株集中投資の盲点|医師投資家が備えるべき資産防衛戦略
以上が、2025年に向けて再浮上してきたアメリカの債務問題の要点です。
今後を見通すにあたって、以下のようなシナリオを想定する必要があります。
- 国債の発行額がさらに増加し、それに伴ってドルの供給も増えることでインフレが加速
- インフレ抑制のための金利引き上げが政治的・財政的に困難となり、結果としてインフレがさらに進行
- その影響でドルの価値が相対的に低下し、ドル安が進む可能性が高い
こうした流れの中で、米国株だけに集中投資していると、たとえ株価が上昇しても「為替差損」によって実質的な資産価値が目減りするリスクがある、という点を医師投資家としてはぜひ頭に入れておきたいところです。
自分は対策として、実物資産である「金(ゴールド)」を一つの防衛手段として活用しています。

これは、通貨の価値が不安定になる局面で、歴史的にも信頼性の高い資産です。
多くの医師投資家にとっても、こうした視点で資産防衛を考えるタイミングが今まさに来ているのではないでしょうか。
データを元に日米の財政状況を分析しています。じっくり読み解くと、本質が見えてきます。