2025年第一四半期(1月~3月)、金(ゴールド)が熱い視線を集めています。
Gold Demand Trends: Q1 2025www.gold.org
需給は1,310.0トンと、2016年以降の第一四半期としては過去最高レベルに到達。
しかも供給1,206.0トンを上回っています。
背景にあるのは、米国の関税政策やそれに伴う経済・地政学的リスクの高まり。
投資に目を向ける読者にとって、こうしたマクロの動きは見逃せません。
金は典型的な「安全資産」。
不安定な情勢下では資金が流れ込みやすく、実際にこの3ヶ月で約17%も価格が上昇しています。

これは単なる数字ではなく、「なぜ今、金が買われているのか?」という本質を映し出す鏡。
価格変動の裏にある「需給のバランス」を読み解くことこそ、次の一手を考える上で極めて重要です。
本記事では、その需給の中身を掘り下げ、社会人として忙しい日々を送りながらも投資判断の軸を持つための視点をお届けします。
今この瞬間、金市場で何が起きているのか——その核心に迫ります。
なお、レポートを元にした分析、金投資の実践、価格予測は有料noteとして公開します。
需要
金の需要は、大きく「ジュエリー(装飾品)」「投資」「中央銀行」「テクノロジー」の3つに分類され、それ以外の用途は「OTC(店頭取引)」として扱われます。

それぞれの項目に隠れたトレンドや変化を読み解くことは、個人投資家にとってマクロ経済を肌感覚で捉える訓練にもなります。
以下の統計は2024年第一四半期との比較になります。

1)ジュエリー需要
2025年第一四半期のジュエリー需要は、消費380.3トン(前年比-21%)と在庫53.6トンの合計434.0トンです。
ぱっと見で「不人気」と思いがちですが、価格ベースでは+9%(350億ドル)と、金価格の高騰が売上を押し上げる構図が見て取れます。
注目すべきは、金消費大国である中国とインドの落ち込みです。
• インドは金価格の高騰により-25%
• 中国は所得の伸び悩みにより-32%
つまり、消費としての金需要は価格上昇の壁にぶつかっているのが現状。
今後、世界経済の成長が鈍化する見通しの中で、ジュエリー需要はしばらく逆風を受ける可能性が高いでしょう。

2)投資需要
一方で、金の投資需要は前年比の3倍、551.9トンと爆増中。
経済や地政学の不透明感が高まる中で、安全資産としての金が再評価されているのです。
個人投資家として「守りの資産」を考える際、このような流れは無視できません。
ここでは投資需要の内訳――ETF、ゴールドバー・コイン――を詳しく見ていきましょう。

ETF
前年度は-113トンの流出だったETFが、今期は+226.5トンの流入へ大転換。
特に米国市場のファンドへの流入が目立ち、リスクオフの姿勢が色濃く反映されています。
さらに注目なのは、中国でも現物(金塊やコイン)からETFへのシフトが進んでいる点。
これは投資家がより機動的で流動性の高い手段を選びつつあることを示しており、第二四半期もこの傾向が継続中です。

ゴールドバー・コイン
こちらは325.4トン、前年比+3%の成長。
内訳を見ると、特に中国では+12%増の124トンと顕著。
背景には米中貿易摩擦による不安心理の高まりがあり、現物資産としての金が強く支持されています。
対照的に欧米では歴史的な低水準。
結果として、「現物のアジア、ETFの欧米」という明確な地域差を引き継いでいます。

3)中央銀行
金市場の土台とも言える中央銀行の需要は、今期243.7トンと前年比-21%と減少しました
しかし、依然として年間1,000トンペースを維持中。
価格が上がってもなお、中央銀行が買い続けている事実は、金という資産への根強い信頼を物語っています。
このような長期的な視野に立った動きを参考にするのも、個人投資家としてのポートフォリオ設計に有益です。

4)テクノロジー需要
金のテクノロジー分野での需要は80.5トンと横ばい。
エレクトロニクスの需要が堅調で、歯科など他用途の減少をカバーしています。
5)OTC(店頭取引)
最後に、2025年Q1のOTC需要は-104.0トンとマイナス。
理由は明確ではないものの、
• 投資家がOTCの現物よりETFを好むようになっていること
• 在庫がマーケットへ移動した可能性
などが指摘されています。
いずれにせよ、需要全体に対して供給が追いついていない構図に注目です。
供給
金の供給は、大きく分けて「鉱山からの新規産出」と「リサイクル金」の2つ。

どれだけ買いたい投資家がいても、供給が追いつかなければ価格は上昇する——これは基本中の基本です。
個人投資家として仕事の合間に投資判断を行うなら、こうした供給側の制約にも目を向けておく必要があります。

1)金鉱山
2025年第一四半期の鉱山産金量は855.7トン(前年比+1%)と、概ね例年通り。それに生産者ヘッジ5.0トンが加わります。
ただし、内実は均一ではありません。
一部では増産が進んでいるものの、政情不安や労働環境の問題、気候リスクなど、地域ごとの事情により生産停止や遅延が発生。
今後も「横ばい〜微増」が基本線ですが、突発的な供給ショックが起きる可能性も否定できません。
投資家にとっては、こうした「見えにくいリスク」が金価格のボラティリティを押し上げる要因になることを知っておくべきでしょう。
職場環境同様、予測不能なトラブルへの備えが鍵となります。
2)リサイクル金
今期のリサイクル金供給は345.3トンで微減。
一見小さな変化ですが、ここにも市場心理がにじんでいます。
供給元の主力は宝飾品業者ですが、現状は「価格上昇=まだ上がるかも」という期待感から、売却を後ろ倒しにしているケースが多いと見られています。
実際、在庫は増加傾向にあり「売り渋り」の様相。
つまり、価格が上がってもリサイクル金が市場に出回らず、需給ギャップが一層拡大する可能性もあるのです。

WGCレポートの分析
今回のWGC(World Gold Council)レポートは堅実に資産を築きたい投資家にとって、極めて示唆に富む内容でした。
ココから先、レポートを元にした分析、金投資の実践、価格予測は有料noteとして公開します。料金は 円となります。
心を込めて書き上げました。続きを、ぜひご覧いただけたら嬉しいです。
有料note目次
・WGCレポートの分析
1)需要過多
2)金ETFの躍進
3)中央銀行の継続需要
・金はどのように買うか?
1)金は補完の資産から主流の資産へ
2)下落で買うか?積み立てるか?
・まとめ:金はどこまで上がるか?
1)コモディティ(商品)である金は急騰する
2)個人投資家の金投資スタイルは
note: なぜ今、金が買われているのか?──2025年第一四半期「金ブーム」の裏側を読み解く
金について基礎的なことが載っており、学びの多い本でした。