こんにちは、山のクマです。
高血圧診療で大切なのが、塩分制限です。
「塩分の取りすぎに気を付けましょう」と話しても、塩分過多は自覚しにくいモノです。
そのようなとき、客観的なデータとして1日塩分摂取量を検査出来ると、便利です。
今回はエクセルで塩分摂取計算表を作る方法、および塩分摂取量計算サイトを提示しながら、指導のコツについて書いてみます。
エクセルで作る塩分摂取計算表
必要なデータは、年齢、身長(cm)、体重(kg)、尿中ナトリウム(mEq/L)、尿中クレアチニン(mg/dl)です。尿は随時尿でOK。
C2:年齢
C3:身長
C4:体重
C5:尿中ナトリウム
C6:尿中クレアチニン
を入力します。以下は計算式です。
E6:=C6*10
C8:=(-2.04*C2)+(14.89*C4)+(16.14*C3)-2244.45
C9:=21.98*((C5/E6)*C8)^0.392
C10:=C9/17
それぞれのセルに、上記をコピー&ペーストしてください。
これは高血圧ガイドライン2019に載っている、田中法です。
Tanaka T, et al:J Hum Hypertens. 2002;16(2): 97-103.
メリットとしては
・スポット尿で良い
デメリットとしては
・クレアチニンの男女差を無視している
クレアチニン産生量は、一般的に男性の方が女性より多く、その原因は筋肉量と言われています。
なお、川崎法というのもあります。
Kawasaki T, et al:Clin Exp Pharmacol Physiol. 1993;20(1):7-14.
こちらの方が男女差を反映しているのですが、早朝第二尿を使うのと計算式が面倒なので、一般診療ではちょっと使いにくい。
多くの場合、計算結果は「田中式<川崎式」です
塩分計算サイト
あちこちにありますが、全て田中法です。
診察室のPCがネットにつながっていれば、こちらの方が使いやすいでしょう。
現在の塩分摂取推奨量は?
高血圧学会では、1日6gを推奨しています。
でも、塩分1日6gの食事を食べたことがありますか?
それを実現できるのが、病院食です。
病院食は?
多くの病院で、常食(普通の患者さんの食事):9~10g、高血圧食:6gとなっています。
自分の経験では、塩分10gはおいしく食べられましたが、6gではおいしくありません。ちなみに私の塩分摂取量は約8gです。
高血圧患者さんの中に、入院すると血圧が下がる人がいます。しかし退院後は血圧が元に戻ります。高血圧食の影響でしょう。
これも、食塩摂取量が普段から多いためだと思われます。
西日本では塩分摂取量が少なく、東日本では多い
以前内科学会で、ある西日本からの発表を聞いて、驚きました。
「高血圧患者さんのうち、1日塩分摂取量が6g以下のヒトは25%しかいません」
当クリニックは東日本にありますが、6g以下の患者さんは一人もいません。
塩分摂取量は東日本に行くほど増えるというのは、本当ですね。
塩分指導のコツ
手っ取り早く塩分摂取量を下げるには、
・味噌汁を半分にする(マイナス0.5~0.6g)
・ラーメンの汁を残す(マイナス2~3g)
の指導が簡単で効果もあります。
本格的に食事の塩分を減らすには、「ゆっくり下げる」のがコツです。
イギリスでは8年かけてパンに含まれる塩分を1.4g減らし、脳卒中と心臓病の死亡率を減らしています。
人間は徐々に味を薄くすると、気がつかないんですね。
塩分過多のヒトの降圧薬
塩分過多のヒトには利尿剤を少量用いると、良く効きます。
その際、クレアチニンとカリウム、尿酸値は経過を追う必要があります。
また夏場は汗で水分と塩分が出て行くため、ARBやACE阻害薬、利尿剤の減量を必要に応じて行います。
まとめ
以上、塩分摂取が多い人のマネージメントについて書いてきました。
減塩は「味覚」という人間の根源を変えるため、難しいモノです。
また、せっかく減塩で血圧が下がっても、食事がおいしくなければ、生活が楽しくありません。
時間を掛けて、無理をせず、減塩して行くよう働きかけるのが、最大のコツです。