臨床

コロナワクチンは打った方が良い?

コロナワクチンは打った方が良い?

こんにちは。山のクマです。

2021年2月から日本でも、新型コロナウイルスワクチン(コロナワクチン)の接種が始まりました。

最初は医療従事者、次に高齢者、その後基礎疾患を持っている人など、順次接種が行われます。

ただ、なにぶん新しいワクチンでもあり、打った方が良いかどうか、悩んでいる人が多い状態です。患者さんからもよく聞かれます。

自分はワクチンの専門家ではありませんが、2021年2月末時点での情報を総合して、どのようなワクチンか、また接種した方が良いのかを考えてみました。

結論は、

1)コロナワクチンは従来とは異なり、免疫応答を起こさせる物質をヒトの身体に作らせるものである

2)COVID-19の脅威にさらされているヒトは、接種する合理性がある

3)最終的に接種するか否かは、個々人の価値観によるところが大きい

となります。つまり、一つの正しい答えがあるわけではない、と言うことです

今回のコラムは、(一社)日本感染症学会が出した「COVID-19ワクチンに関する提言(第1版)」をもとにしています。

ワクチンのメカニズム

現在日本で接種予定のワクチンは、

1)ファイザー/ビオンテック
2)モデルナ
3)アストラゼネカ/オクスフォード

の3種類です。
コロナワクチンは打った方が良い?
ファイザー・モデルナはmRNAをlipid nanopartilcle(LNP)で包んだ構造をしています。接種後LNPの働きでmRNAがヒトの細胞内に入り、コロナウイルスの抗原蛋白が生成されます。

伝令RNA:Wikipedia
コロナワクチンは打った方が良い?
アストラゼネカはベクターウイルスを使って、ヒト細胞内に遺伝子を導入します。このベクターウイルスはチンパンジーアデノウイルス、つまりDNAウイルスのため、DNAがヒト細胞内に入り、コロナウイルス抗原蛋白が生成されます。

ウイルスベクター:Wikipedia

今までの不活化ワクチン、生ワクチンは外から抗原や弱毒ウイルスを入れていました。

しかし今回は、3種類とも抗原蛋白を自分自身の細胞に作らせる事で、免疫を誘導します
コロナワクチンは打った方が良い?
ココが従来のワクチンとの大きな違いで、新しい点です

なぜ低温が必要か

アストラゼネカは2℃~8℃の温度でOKなのに対し、ファイザーは-75℃、モデルナは-20℃と超低温での保管が必要です。

RNAは、温度が高くなると、分解されるスピードが速くなります。
【やってみた】RNAを常温で放置してみた:ThermoFisher

しかもこのワクチンはmRNAを脂質でくるむだけという「自然ではあり得ない」状態です。

そのため安定した状態で保管するには、超低温が必要なのではないかと思われます。

一方アストラゼネカは、遺伝子が組み込まれたベクター「ウイルス」であり、自然に近い状態の製品のため、超低温は必要ないのではないか、と思われました。

安全性は?

現在データがそろっているのは、接種後すぐと数ヶ月後の有害事象です。

臨床試験における有害事象

代表的なモノは、刺入部疼痛、発熱、倦怠感、頭痛、筋肉痛です。

1)刺入部疼痛
ファイザー、モデルナとも70%~80%、アストラゼネカは20%~60%に局所の疼痛がみられます。

他のワクチンでは、たとえば不活化インフルエンザワクチン10%~22%、23価肺炎球菌ワクチン(PPSV23)58.3%、13価肺炎球菌ワクチン(PCV13)68.2%です。

以上から、刺入部疼痛は多いといえます。

2)38℃以上の発熱
ファイザー・モデルナでは1回目は少ないのですが、2回目接種後に10%~17%にみられています。アストラゼネカでは18歳~55歳で1回目24.5%でしたが、2回目はすべて0%でした。

他のワクチンでは、不活化インフルエンザワクチン1%~2%、PPSV23 1.6%、PCV13 4.2%です。

以上から、発熱も多い有害事象といえます。

3)倦怠感
ファイザー・モデルナは30%~40%ですが、アストラゼネカは40%~70%となっています。他のワクチンのデータは、参照していません。

4)頭痛、筋肉痛
ファイザー・モデルナは25%~40%、アストラゼネカは40%~60%です。これも他のワクチンのデータは、参照していません。

これは想像ですが、アストラゼネカはベクターウイルスを使っているため、倦怠感、頭痛、筋肉痛と言った感染症様の症状を来しやすいのでは、と思われました。

長期の安全性は?

mRNAは人間の身体で分解されやすく、長期間体内に残存することはありません。またヒトの染色体に組み込まれることはないため、比較的安全性は高いと予想されています。

しかし、mRNAを繰り返し投与した場合や、LNPの長期的安全性は、まだ明らかになっていません。

アストラゼネカで使っているベクターウイルスはチンパンジーアデノウイルスのため、人体では増えません。

また抗原提示した細胞はやがて消失してゆくため、安全性は問題ないと考えられます。

なおベクターウイルスを使った医療製剤は、既に先天性代謝疾患や癌の治療、エボラ出血熱に応用されています。

以上から、コロナワクチンも長期の安全性は問題ないとされています。

しかし過去には、日本でもMMRワクチンが中止されたり、フィリピンでデング熱ワクチンが中止されたりと、後々安全面での問題が浮き彫りになる事例がありました。

臨床データ

最もワクチン接種が進んでいるイスラエルでは、ファイザーを使ったヒトでは感染予防の有効率が89.4%と出ています。ただしこのデータは、草稿の状態のモノで、査読が済んでいません。

死亡は2回接種で98.9%減らしているとのデータがあります。

なお、本来ファイザーは2回接種ですが、1回でも発症予防効果が85%程度あるとも報告されています。原著はLancetですが、こちらは確認できていません。

コロナワクチンは打った方が良いか?

COVID-19には、インフルエンザと異なり特効薬がありません。予防できれば、それがベストです。

以上のデータを総合して、以下のように考えました。

COVID-19患者と多く接するヒトは接種する合理性がある

COVID-19患者に日々接する人々は、感染のリスクが高い状態です。

そのため、感染予防効果が高く、短期の副作用がわかっているファイザーのワクチンを打つ合理性があります。

COVID-19で重症化しやすいヒトは打つ合理性がある

60歳以上の高齢者、中等症~重症の慢性呼吸器疾患、糖尿病、慢性腎臓病、心疾患、BMI 30以上、などが重症化しやすい因子です。これらの基礎疾患を持っている人は、打つ合理性があります。

なお高血圧は、糖尿病や慢性腎臓病とあわさり動脈硬化が進んだ場合、重症化しやすいと思われます。

高齢者が多い施設入居者も、接種する合理性があります。

それ以外のヒトは?

これは難しい問題です。

3種類のワクチンの大規模試験には、アジア系が非常に少ないという点が、まず懸念材料です。

また、日本は人口あたりのCOVID-19数が、全世界の142位と下の方です。

さらに、ワクチンを打っても、マスク・手洗いはCOVID-19予防のため、続ける必要があります

以上から、現時点でコロナワクチンを打つかどうかは、個々人の価値観によります。

全く新しいワクチンなので打ちたくない、と言う人もいるでしょう

じっくりと待ってから打ちたい、という人もいるでしょう

是非早く打ちたい、という人もいるでしょう

自分自身で考えて答えを出すしか、ありません

まとめ

以上、コロナワクチンについて考えました。

今回の3つのワクチンは、新しいワクチンです。予防効果は高く、理論上安全性も高いと考えられています。

しかし歴史的に、副作用のため消えていったワクチンもあります。

現在の所、

1)COVID-19に多く接するヒト
2)COVID-19で重症化しやすいヒト

は接種する合理性があります。

医学的視点から言えることは、ココまでです。ココから先に議論を進めても、カントが「純粋理性批判」の中で「アンチノミー」と述べたように、「打った方が良い」「打たない方が良い」という両方の結論に達することが出来てしまいます

純粋理性批判(上)→Amazon.co.jp

従って上記2つに該当しないヒトが打った方が良いかどうかは、繰り返しますが、最終的に個々人の判断となります

なお、以上は個人的な見解である点を、ご了承ください。