2023年8月29日は、歴史的な日となった。
金1gが1万円を越えたのだ。
とうとうココまで来たか・・・。
金投資を長年やってきた身として、とても感慨深い。
メディアでは円安が主要因と報じているが、それだけではない。
中央銀行の購入量増加、ドル増刷、ウクライナ戦争などが絡み合っている。
さらに力を付けてきたBRICSの存在も重要だ。
今後の金価格を占うために、BRICSと金の、深い関係から物語をはじめよう。
BRICSと金
BRICSとは、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの頭文字。
2011年、投資銀行ゴールドマン・サックスが投資家向けのレポートで用いたことで、BRICSの名前は広がった。
この5カ国、金と関連が深い。
金産出量の世界ランキングはブラジル14位、ロシア3位、中国1位、南アフリカ8位だ。
ランクインしていないインドだが、実は金を好むお国柄。
娘が結婚するとき、父親が金を持たせる風習がある。
かわいい娘の婚姻。そりゃ父ちゃん頑張るわな。
さらに中国はゴールドが大好きな国民。
経済成長と供に、庶民が金購入を増やしている。
BRICS首脳会議
8月22日~8月24日に南アフリカのヨハネスブルグで、BRICS首脳会議が開催された。
今回の会議では、イランやサウジアラビアなど6か国を、新たに加盟することが決まった。
この会議、一部で「BRICS新通貨」の発表が噂されたが、結局発表はナシ。
しかし今年に入り、グローバルサウスは、お互いの通貨で貿易を行うようになっている。
原油取引を、中国は人民元で、インドはルピーで決済した。
とても重要なポイントなのだが、日本のメディアはほとんど報じていない。
なぜ重要なのか?
理解するにはSWIFTの知識が必要だ。
SWIFTとは
例えば日本が中国製品を購入し、決済を行う時、次のような手順で行われる。
日本企業:円をドルに交換
↓
SWIFT(手数料発生)
↓
中国企業:ドルを人民元に交換
米国を介さない取引なのに、決済にはドルが必要なのだ。
国際貿易はほぼドルを通して行われている。
そのため、ドルは「基軸通貨」と呼ばれる。
輸出入に必要なので、各国はドルを外貨準備として持っている。
平時は難なくコトが進む。
しかし隠れていたSWIFTの問題が、ウクライナ戦争で顕在化した。
ロシアのSWIFT排除
ウクライナ侵攻により、ロシアはSWIFTから排除され、国際決済が出来ない状況となってしまった。
ウクライナ・米国はコレで「兵糧攻め」する戦略だった。
しかしロシアはこの制裁を回避して、貿易している。
兵糧攻めは上手くいっていない。
しかも、各国の恐怖を煽ることとなった。
「米国に逆らうと必要な物資を輸入できなくなる」
グローバルサウスはSWIFT以外の選択肢を求めるようになり、各国通貨での取引をはじめている。
一見良いようだが、コレにも大きな障害がある。
各国通貨で取引する問題点
各国通貨で取引するときには、相手通貨を保有しておく必要がある。
しかし途上国は経済的に安定していない。
アルゼンチンは年100%を越えるインフレもあり、デフォルト危機。
経済の安定しない国の通貨は、誰も持っていたくはない。
受け取ったら、世界一安全と言われるドルに換えたくなる。
しかしSWIFTから排除されていたら、不可能だ。
各国通貨取引の最大の難所が、コレなのだ。
ではどうするか?
BRICS新通貨は金??
ココから先は未確認の情報を元に推論しており、一つの物語とみて欲しい。
途上国同士の通貨を、安心して交換するには、安定した通貨を介するのが最適。
そこで登場するのが、BRICSに馴染みのゴールドだ。
日本人はほとんど知らないが、金は無国籍通貨と呼ばれている。
SWIFTのドルの位置が金に変わったら、どうなるか?
サウジアラビアが中国製品を購入し、決済を行う時の手順を見てみる。
サウジ企業:通貨リアルを金に交換
↓
新決済システム(手数料発生?)
↓
中国企業:金を人民元に交換
この時、金現物を交換する必要ない。
投資用ゴールドのほとんどは保管庫に眠っており、書面で所有者移転が行われているのだ。
ではSWIFT以外の貿易決済システムそのものを作れるのか?
実は人民元決済システム(CIPS)というSWIFTのような決済システムが既に動いている。
SWIFTから排除されたロシアも使っている。と言われている。
CIPSを金決済システムに移行すれば、すぐに稼働できる状態だ。
BRICS新通貨を「新たな金本位制」と述べているヒトもいるが、どうだろう?
上記のシステムなら、金本位制ではない。
まとめ:今後の注目ポイント
今後BRICSの貿易決済がどう進むのか、注目する必要がある。
上記の物語が進むなら、各国は金購入を増やすだろう。
2020年はコロナ禍で金を現金化したため、減少した。
2022年は1,000トンを超えたが、これはグローバルサウスが買い進めているためだ。
金は年間約4,500トン前後の産出量と一定であり、急に買いが増えると高騰する。
保有量を増やすときは、少しずつ、少しずつ、気付かれないように買う必要がある。
中央銀行の購入がじわじわ増えてくるようなら、グローバルサウスは本気でSWIFT離脱を進めているシグナルだ。
そうなれば、さらに金は上昇するだろう。
1g=1万円は通過点に過ぎない。