こんにちは、山のクマです。
開業医にとって最も難しいのが、クリニック承継です。
自分で親子承継を経験し、また周りの開業医を見ても、
大変だな~と思います。
自分の都合だけでは動きませんからね。
診療科が変更となる承継は、あまり問題になりません。
新しいクリニックとして生まれ変わるわけです。
トラブルが起きるのは、同じ診療科同士です。
原因は、ベテランの先代ドクターと、若手の当代ドクターの両方にあります。
理由は
1)治療方針の違い
2)経営方針の違い
3)戦略の違い
に分類されます。
今回この3点について、承継の難しさと円滑な方法を考えてみます。
治療方針の違い
一般的に先代と当代では、医学的知識に約30年の差があります。
医学の世界は30年でがらっと変わります。
先代がアップデートしていても、引退を考える頃にはついて行くのがやっとです。
いざ当代ドクターが「最新の」治療に急に切り替えると、
先代の治療になれている患者は、離れて行ってしまいます。
スタッフも激しい変化について行くことが出来ません。
当代ドクターにとっては、結構ジレンマです。
明らかな医学的問題が無い限り、
それまでの治療方針を続けた方が良いです。
患者やスタッフが慣れてきたところで、
徐々に変えて行くのが良いでしょう。
経営方針の違い
こちらの方がトラブルを起こしやすいです。
経営権争い
頻繁にお目にかかります。
特に親子承継で顕著です。
子供さんが継いだけどケンカが絶えないという噂も、良く聞きます。
先代の妻がお嫁さんに財布を握られたくなくて、お金の管理を任せなかったという事例も聞いたことがあります。
このケースでは当代ドクターが怒って飛び出し、妻の実家から支援を受けて別の場所に開業しました。
先代のクリニックは後継者がおらず、廃院となっています・・・。
ウソみたいな話ですでどね・・・。
経営権争いはとてもやっかいですね~。
経営権を簡単には譲りそうにない開業医のばあい、
子供であっても「継承しない」という選択肢をもって置いた方が良いかもしれません。
親子ゲンカは本当に泥沼にはまりますから・・・。
経営手腕
経営権を譲ったとしても、先代が何かと口を出してくるケースも目立ちます。
先代は当代の経営手腕の甘さを我慢できないのでしょうけど、
経営というのは教わるのではなく、自分で学んでいくモノです。
しかも時間がかかります。
当代は経営も勉強することが大事で、
先代はぐっと我慢することが必要です。
経営の勉強法
いざ経営を学ぼうと思っても、具体的な方法は誰も教えてくれません。
自分は以下のように学びを進めました。
1)既存の経営法を学ぶ
2)現場に落とし込んで行く
3)結果を受け入れ修正する
4)同じ事を繰り返しブラッシュアップする
今流行のPDCAサイクルです。
こうやることで、徐々にですが経営力が付いてきました。
経営力の評価項目は患者数・売上高・利益です。
クリニックは地元に密着している事が多く、
地域の特性も加味しないと、患者数は増えません。
PDCAサイクルを回すことで経営力が付いてきます。
強靱な経営力を身につけるには
さらに抽象度の高い考え方を学ぶと、理想的です。
例えばこちらのような本。
純粋理性批判
→Amazon.co.jp
資本論
→Amazon.co.jp
一見経営法とは無関係に思えますが、
今回のコロナ禍のように、
前例のない・先の見えない状況でどう運営して行くか。
難しい判断力を身につけるには、哲学書などを読む事が効果的です。
どのような状況でもクリニックをつぶさない。
自分やスタッフが路頭に迷わないためにも、大切な項目です。
戦略の違い
クリニックを軌道に乗せるには、院長の強みを活かすことが最も大切です。
院長の強みに合わせ、診療圏の設定、広告などの営業活動、スタッフの教育などを行う必要があります。
同じ診療科でも、先代と当代では得意・不得意分野が違うんですよね。
当代ドクターが自分の強みを発揮しないと、
患者さんは離れていきます。
先代ドクターも戦略の違いを意識しないと、
当代との間でトラブルになります。
強みを活かした戦略を意識することが、とても大切です。
先代と当代の親子ゲンカって、こういったことがベースになっています。
本人達は気づかないんですよね~。
理想の承継は難しい
クリニックは院長の個性を伸ばすように育っていきます。
医院の個性ごと継承してもらうのが理想ですが、
とても大変です。
そもそも違う人間なんですから。
承継には「すりあわせ」が必要であり、
当代ドクターが先代としばらく一緒に診療して、
コトバにならない部分も含め、受け継ぐのが理想でしょう。
引き継いだ後、さらにブラッシュアップすることで、
クリニックが発展して行く。
経営の醍醐味です。