- 世界の金投資需要は前年比+78%と急増。特にETFが北米で大きく伸長。
- ジュエリー需要や中央銀行の購入は価格上昇の影響で減少傾向に。
- それでも中央銀行の金保有姿勢は堅調で、長期的な信認の証といえる。
- 鉱山生産は増加したが、年1%未満の伸びでインフレ率を下回る。
- リサイクル供給は弱含みで、金価格の上昇余地が残る構造。
- 日本では若年層による金投資が進む一方、高齢者は売却へと世代交代の兆し。
- 日銀は金を購入しておらず、通貨リスクへの備えに懸念が残る。
- これらの需給動向から、金価格は長期的に上昇する可能性が高い。
- 忙しい医師でも、ETFを通じて手軽に金投資ができる。
- インフレ・地政学リスク・通貨不安に強い「守りの資産」として金が有効。
金(ゴールド)の需要動向|医師投資家が知っておくべき4つの分野別トレンド
2025年第二四半期の金需要は、カテゴリーごとに明暗が分かれました。
金価格の高騰が需給の構造を大きく動かしており、「医師×投資」の視点からも見逃せない変化が起きています。
ジュエリー:華やかさの裏で見えた陰り
ジュエリー需要は314.0トンと、前年比で14%も落ち込みました。
特に中国とインドという二大消費国での買い控えが顕著です。
理由はシンプルで、「高すぎるから」。金価格の上昇が家計の手を止めたわけです。
ただし、金額ベースでは前年比+21%という結果に。つまり、売れた量は減っても、売上は増えている。
これは投資家にとって「価値の維持」どころか「価値の増大」を意味します。
モノとしての金より、資産としての金が主役になりつつあることを示唆しています。
投資:ETFが牽引した需要の爆発
金投資需要は477.2トンと、前年比78%という驚異的な伸びを記録。
これは医師として多忙な日々を送る方にとっても注目すべきトレンドです。
なぜなら、増加の主因が「ETF(上場投資信託)」だからです。
金地金やコインも伸びていますが、特に北米でETF需要が爆発。
これは「手間をかけずに金に投資したい」というニーズが反映された結果です。
リアルな現物ではなく、証券口座で完結する投資対象としての金。
金融リテラシーが高い層ほど、このトレンドに早期に乗っている印象です。
中央銀行:慎重だが、意欲は継続
中央銀行による金購入は166.5トンで、前年比21%減少。
ただし、これはあくまで「去年より控えめだった」という話。
2021年以前の平均水準と比べると、41%も上回っています。
つまり、金価格が上がっても「買う価値がある」と判断している国が多いということ。
実際、World Gold Councilの調査でも多くの中央銀行が「これからも金を買う」と答えています。
地政学リスクや通貨の信認低下に備えて、金は依然として「最後の砦」として信頼されているのです。
これは個人投資家、特に医師のような高所得層にとっても共通の防衛策となり得ます。
テクノロジー:足踏みする工業需要
最後に、テクノロジー用途の金需要は78.6トンで前年比2%減。
主な要因は米国の関税政策による先行き不透明感。
半導体や電子部品に使われる金の需要が読みにくくなっており、ここにはまだ投資妙味は少なそうです。
需要のまとめ
このように、金の「需要構造」は一枚岩ではなく、それぞれの動きに意味があります。
特に投資セクターの急伸と中央銀行の粘り強い購入姿勢は、医師がポートフォリオに金を加える上で強い裏付けとなる材料です。
金の供給構造とは?|鉱山生産とリサイクルから読み解く価格の裏側
金価格の背景を理解するうえで、「供給面」の分析は欠かせません。
医師として日々の診療に追われながらも、安定的な資産形成を志すなら、需給バランスに目を向けることが重要です。
鉱山生産:増加はしたが、“安定”とは言えない
2025年第2四半期の鉱山生産量は1,248.8トン。前年比+3%と微増しました。
数字だけ見ればポジティブな印象を受けるかもしれませんが、これはあくまで「今のところ」の話です。
実際には、鉱山開発は事故、契約の期限切れ、労働者のストライキなど、多くの不確実性を抱えています。
供給が“安定”しているとは到底言えず、むしろ「供給リスクを常に内包している」資源です。
これは、医療現場での突発的なトラブルに近い構図で、予測不能な要因が市場を揺らします。
つまり、供給の不安定さは中長期的に金価格の下支え要因となり得るため、投資対象としての“保険的価値”を再認識すべきポイントです。
リサイクル:上昇幅の小ささが意味すること
一方、リサイクル由来の金供給は908.6トンで前年比+1%。
金価格がこれだけ上昇しているにもかかわらず、伸び幅は限定的でした。
これは一見地味ですが、重要なシグナルです。
通常、金価格が上がれば、個人や業者が「今が売り時」とばかりにリサイクル市場へと金を流す傾向があります。
しかし今回はその動きが鈍かった。つまり、人々は「まだ上がる」と見ている可能性がある。
いずれにせよ、リサイクルの供給増が鈍いというのは、価格上昇圧力が残っていることの裏返し。これは投資家にとって追い風です。
供給のまとめ
供給の視点から見ても、金市場には「価格が上がりやすい地合い」が整いつつあるように見えます。
医師という職業柄、資産保全を重視する方にとって、金は依然として注目すべき選択肢と言えるでしょう。
日本国内の金需要の特徴|高齢者は売り、若者が買う“世代交代”と日銀の課題
世界の金市場が活況を呈する中、日本の動きはやや対照的です。
グローバルとローカルの温度差をどう読み解くかは、投資戦略を練るうえでの重要なヒントになります。
ジュエリー:価格の壁に阻まれた「美しさ」
日本国内でも、金のジュエリー需要は金価格の高騰を受けて減少傾向にあります。
「買いたいけど高すぎる」と感じる層が多く、購買意欲が冷え込んでいるのが実情です。
これは“贅沢品”としての金に対する感覚が強い日本ならではの現象とも言えるでしょう。
逆に言えば、金を「資産」として捉える層にとっては、周囲が買わない今こそがチャンスかもしれません。
投資:高齢者が売り、若者が買う。その行方は?
興味深いのは、投資セクターの構図。高齢者層が過去に買った金地金やコインを、この高値圏で売却する一方で、若い世代が金を買い始めているという動きが続いています。
ただし、全体としては若干のマイナス。つまり「売りが買いをわずかに上回っている」という状況です。
これは医師のように比較的高収入で安定した職業の方にとって、逆張りのチャンスと捉えることもできます。
世代間の需要のズレは、相場にとって“静かな変化”の前兆であることが多いのです。
中央銀行(日銀)の動き:まさかの「静観」
最も懸念されるのは、日銀が金を購入していないという事実です。
世界の中央銀行が地政学リスクやドル不安を背景に金を買い進めている中で、日本だけが静観している状況。
これは“国家レベルのリスクヘッジ”が十分に行われていない可能性を示しており、投資家にとっては警戒すべきシグナルでもあります。
通貨不安に備えて、個人として「自衛的に金を持つ」という選択肢がますます重要になる局面です。
日本の金需要のまとめ
国内の金需要の低調さは、逆に「割安なタイミング」「他が見逃しているチャンス」につながる可能性があります。
日本の動きを相対的に見ることで、個人投資としての判断に深みが出るはずです。
金価格は今後どうなる?|最新需給レポートから読み解く長期投資の見通し
ここまで見てきた金市場の動向を整理すると、「価格は上がっているのに、需要と供給のバランスが崩れている」という、一見矛盾した構図が浮かび上がります。
しかし、そこにこそ“投資のチャンス”が潜んでいます。
宝飾品・中央銀行の買い控えは、「高すぎる」がゆえ
金価格の上昇が、ジュエリー需要と中央銀行の買い付けをやや抑制する結果となりました。
これは一見ネガティブにも見えますが、価格上昇が「需要を押しのけるほど強い」という力強さの裏返しでもあります。
特に中央銀行は、慎重姿勢を見せつつも、依然として購入意欲が高いという点が重要。
大量に買った金を市場で売却することは極めて稀で、いわば「ロックされた需要」と言えます。
これは、将来的に市場へ放出されにくい供給制限を意味しており、価格の下支え要因として無視できません。
投資需要の急拡大が意味するもの
一方、投資需要が旺盛だったことは、金融市場や地政学的リスクが引き続きくすぶっているサインとも取れます。
特にETFの増加は、個人や機関投資家が“有事の避難先”として金を選んでいる現れ。
医師という専門職は、医療制度や保険点数の変更など外部環境に左右されやすい一面がありますが、こうしたリスクに備える「資産の避難所」として金が再評価されているわけです。
供給の現実:インフレ率に追いつかない金の増加
供給面では鉱山生産が増えたとはいえ、年1%程度の増加にとどまっており、現在のインフレ率と比較すると追いついていません。
つまり、「希少性」はむしろ強まっていると言える状況です。
今後、一時的な価格調整はあるかもしれませんが、長期的なトレンドとしては金価格の上昇余地は依然として大きいと考えられます。
まとめ──なぜ、いま医師こそ「金」に目を向けるべきなのか?
今回の2025年第2四半期の需給レポートを俯瞰すると、金(ゴールド)という資産の特性が改めて浮き彫りになります。
ジュエリーや中央銀行の購入が一時的に弱含んでも、投資需要は旺盛。それは、金融市場や世界情勢に対する不安が強まっているサインであり、多くの投資家が“安全資産”として金を選び始めている証拠です。
一方で、供給側は極めて限定的。鉱山生産の伸びはインフレ率を下回り、リサイクル供給も思ったほど伸びていません。
つまり、金の希少性は今後も継続し、価格の下支えが期待できる状況です。
このような需給の構造を踏まえると、金は「資産のリスクヘッジ」としてきわめて有効です。
医師という職業は、専門性が高く安定的な収入がある一方で、資産が現金や保険、年金に偏りがちという傾向があります。
しかし、予測不能な経済環境・通貨の不安定さ・地政学的リスクに備えるには、ポートフォリオに“無国籍で普遍的価値を持つ資産”=金を組み込むことが重要です。
ETFであれば証券口座から簡単に購入でき、忙しい医師にとっても運用の手間は最小限。リスク分散の一手として、むしろ積極的に選びたい選択肢といえます。
金は、目立たないが着実に価値を守る“静かな守護神”です。長期目線での資産防衛を考える医師投資家にこそ、今こそ注目していただきたいタイミングです。
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