こんにちは、山のクマです。
今、World Gold Councilという金(きん)業界団体の、
「2020年金動向」というレポートを読んでいます。
なかなか表に出ることのない、
ゴールド売買の様子が詳しく描かれています。
かなり専門的な内容になりますので、まずは簡単にまとめます。
・2020年はコロナ禍で、宝飾用の金需要が著しく低下しました。
・通常なら金価格が低下するはずですが、金融マーケットの資金が金ETFに流入して、価格が高騰しました。
・その後株価の再上昇と供に金価格は低下しています。
・2021年はインフレ率の増大等の要因で、金価格は緩やかに下がると考えられます。
金の需給要因
ここ10年の基礎的なデータは以下の通りです。
金の供給
鉱山からの産出が3,300トン前後。
スマホやジュエリーなどからのリサイクルが1,200トン前後。
在庫からの拠出などもあり、
合計4,500トン前後です。
金の需要(消費)
宝飾用が2,200~2,500トン前後。
ゴールドバー(延べ棒)と金貨が1,000トン前後。
金の裏付けのあるETFがマイナス800~プラス800トンと変動。
中央銀行が300~500トン前後。
工業用が300~350トン前後。
合計4,300~4,700トンです。
価格
2020年は金価格が急上昇しました。
1月は1トロイオンス(約31.1g)あたり1,550ドル前後でしたが、
8月には2,000ドルを突破しました。
昔から欧米では、金はトロイオンス単位で表します。
日本円では1グラム5,000円台から、最大7,063円(税抜き)まで上昇しました。
理由はなんと言ってもコロナショックです。
COVID-19が拡大して株価が暴落し、資金がゴールドに流れました。
その後FRBの大規模な金融緩和で株価が回復するにつれ、
12月の金価格は1,800ドル台(6,000円台)に落ち着いてきました。
供給量
2020年は合計4,633トンとなり、2019年の4,820トンから減少しています。
今回の減少は、鉱山からの産出量がコロナ禍により中断したためです。
リサイクル金供給は前年と同様でした。
需要(消費)量
今年は3,760トンと2009年以来初めて4,000トンを割り込みました。
原因はコロナ禍です。
しかし影響は各項目により異なっています。
宝飾品
金消費の中で最も多くを占めます。
中国とインドが二大消費国です。
中国では元々ゴールドに好感度を持っており、
資産価値を持ったジュエリーとして購入します。
インドでは花嫁道具に金が多く使われるため、
伝統的に購入量が多い国です。
2020年は前年(2,123トン)より34%減少し1,412トンとなりました。
コロナ禍による景気の冷え込みが、大きく響きました。
ゴールドバー(延べ棒)と金貨
2019年から微増し、896トンとなりました。
ゴールドバーが減少した一方、金貨が増加しています。
特筆すべきは、ドイツで需要が急増していることです。
超低金利により、金現物(きんげんぶつ)を買う個人が多くなったためです。
この分野では長らく一位中国、二位インドだったのですが、
ドイツがインドを抜いて世界第二位となりました。
ETF
コロナ禍による金融不安の中、機関投資家の資金がゴールドに流入しました。
その先は現物ではなく、金裏付けのあるETFです。
前年(398トン)の120%増となる877トンでした。
ETFへの急激な資金流入が、2020年の金価格上昇の原因です。
中央銀行
90年代までは、中央銀行は金を売る側に回っていました。
しかし2000年以降買い手に回り、
金価格上昇の原因の一つとなっていました。
2020年も273トン買い越しましたが、前年(669トン)のほぼ半分となっています。
中央銀行への意識調査ではゴールドに対する評価は高いので、
今後とも中央銀行は準買い手になると見込まれています。
しかし購入量は以前よりも減少し、2020年の基準に落ち着くと予想されています。
工業用
金はスマホの基盤や歯科用途など、様々な工業製品に使われます。
2020年は302トンと、前年(236トン)からやや減少しています。
コロナ禍による影響ですが、今後とも安定した需要が見込まれます。
なぜ供給量が需要量より多いか?
ひとつの要因はOTCです。
OTCとはover the counterの略で、マーケットを通さずに金の売買を行う事です。相対(あいたい)取引とも言われています。
もうひとつは在庫増加です。
World Gold Counsilでも、このあたりは全てをカバーできないようです。
2021年の動き
供給量、需要量とも、回復してきています。
経済状況もコロナ後の段階となり、
今年半ばからインフレ率が上昇し、
各国中央銀行が金融緩和縮小に動き出しています。
これらの要因は金価格下落につながります。
まとめと考察
以上2020年の金動向を見てきました。
コロナ禍の経済危機でも、
ゴールドの良好なパフォーマンスが示されました。
不況で宝飾用の金消費が抑えられても、
金融資産としての金ETFの買いが増え、
金価格は上昇することがわかりました。
今後リーマンショック級の金融危機が訪れると、
現金化による売りの後の急激な資金流入により、
ゴールドは爆上げする可能性があります。
その規模は今年のビットコインのように、
短期間で5~6倍にも達すると考えられます。
これから中央銀行の利上げがあると、
金価格は下がってくるでしょう。
その時がまさしく「買い時」と考えています。