明けましておめでとうございます、山のクマです。
今年もよろしくお願いいたします。
本来なら明るい話題を提供したかったのですが、
昨年末に暗いニュースが飛び込んできました。
COVID-19関連検査の保険点数引き下げです。
普段からCOVID-19診療を行っている我々からすると、
とてもガッカリなニュースです。
でも今回のケースは、保険診療の今後を考える材料になると思います。
2022年の年頭に、将来をイメージしてみます。
暗い未来ですが、開業してからずっと考えていたことです。
コロナ検査の減点
既にご存じと思いますが、簡単に記載します。
核酸検出(PCR)検査(委託) 1800点 → 700点
核酸検出(PCR)検査(委託以外) 1350点 → 700点
抗原検出検査(定性)600点 → 300点
抗原検出検査(定量)600点 → 560点
ほんと、ガッカリです。
PCR機器を導入した施設では赤字かもしれません。
はしごを急に外す厚生労働省
保険点数は多分に恣意的であり、今までも様々な分野で保険点数の引き下げがありました。
古くは血液透析で、大変だったと聞いています。
国の施策として血液透析が出来る施設を増やすため、保険点数を高く設定していたそうです。
しかし、透析施設が充足した時点でじわじわと引き下げ、
実施している医療機関は、減収を強いられました。
初期に多大な設備投資をしているため、簡単には撤退できず、苦労しているそうです。
背景には医療費逼迫
今回のCOVID-19関連検査費用引き下げについて、厚生労働省は「実勢価格を踏まえて」と説明しています。
しかし実態としては「無い袖は振れない」のでしょう。
理由はなんと言っても人口の高齢化。
高齢者の自己負担は未だに1割~2割の人が大半です。
現役世代が大いに負担していますが、それでも足りません。
そのため税金からの補填が、医療費全体の40%にも及んでいます。
GDPが右肩上がりで税収が増えているのなら問題ないのですが、
そのため、政府は国債を増やし、何とか年金、医療費、介護費を捻出しています。
さらにコロナ禍で、政府支出は急増しました。
日本政府は完全に借金体質です。
コロナ検査の急な引き下げは、どうみても財政逼迫が原因としか思えません。
公定価格の危機が暴露された
日本では医者は安泰と言われてきました。それは親方日の丸だからです。
医療費は自己負担の取りっぱぐれはあっても、
保険組合からの取りっぱぐれはごくわずかです。
まあ、切られることはありますが・・・。
しかし今回のコロナ検査の引き下げを見て、
今後キケンなのではないかと感じました。
どういうことか?
政府財政の引き締めによる医療費削減により、
経営困難になる医療機関が続出する危険です。
財政破綻の可能性
日本は、GDPの200%を越える借金をしています。
国家財政が破綻するかどうかは、様々な意見が飛び交っています。
議論の詳しいところは専門家に任せます。
当事者としては危機管理として、破綻した場合のシミュレーションが必要です。
国家財政が破綻した場合、保険診療にどのような影響が出るでしょう?
検討の結果、3つの状況を想定しました。
遅配が起こる
これはギリシャで起きたことです。
ギリシャが2009年に債務危機を起こした際、緊縮財政を敷きました。
各種支払が滞り、「遅配」という状態になりました。
一般企業でも資金繰りが苦しくなると、社員への給与払いを遅らせます。
現在保険診療は、2ヶ月後に支払われます。
それが3ヶ月、4ヶ月と後ろにずれてくる可能性があります。
部分的な支払のみ
保険診療のうち、30~40%は税金です。
その分の支払が止まり、収入が6割に急に落ち込んでしまうかもしれません。
コレも想定しておく必要があるでしょう。
インフレが起きる
このシナリオは最も可能性が高いと思っています。
2021年後半から、日用品の値上げが続いています。
主な原因はコロナ禍と円安です。
もし国家財政危機が表面化してくると、円、日本国債が売られ、さらに円安となります。
診療報酬費が今のまま固定され、インフレが進行するとどうなるか?
医療機械、消耗品、テナント料、電気・ガスなどが上がるのに、収入は変わりません。
大ピンチです。
経費の中で最も高いのは、人件費。
58%にもなっています。
一般的に赤字になった企業が行うのは、そう、人件費削減とリストラです。
今まで安泰だった医者の給料も一気に下がります。
また使えない医者はクビを切られます。
クリニックは院長の給与がゼロになるか、個人の貯金から法人へ流す必要すら出てきます。
対策はどうする?
2つ必要です。
資金繰り対策
収入が減少したとき、手元に現金がないと地獄です。
手元資金を厚くする必要があります。
こちらの本によると、固定費の半年分、可能なら1年分が目安となります。
公私混合 経営マニュアル
→Amazon.co.jp
開業医の場合、院長の名義で貯金していてもOK。
ただ、現金をためるには時間がかかります。
今のうちからコツコツ行うべきです。
インフレ対策
手元資金が十分あっても、インフレでは現金の価値が下がります。
インフレに強い資産を持つことが、対策になります。
代表は貴金属や不動産といった現物資産と、株です。
なお国債や社債はインフレで価値が下がるため、ダメです。
株は選ぶのが難しく、不動産は運用が難しい。
やはりおススメはゴールドです。
少しずつ購入でき、保管も楽で、ねかせておけばよい。
さらに換金性は抜群です。
ちなみにメイプルリーフ金貨とウィーンハーモニー金貨は、
田中貴金属系列のお店で、日曜祝祭日も売却できます。
まあ本命はゴールドバーですけどね。
資産の10%は保有することをおススメします。
なお金は金利がつかないため、嫌う人がいます。
見方を変えましょう。
金は「正貨」とも呼ばれるマネーです。
金利が付く法定通貨は価値が下がってゆきますが、
金利ゼロのゴールドは価値の下がらないマネーです。
財政破綻が起きなかったらどうなる?
何も変わりません。
医療機関は今まで通り収入があり、医者の給与も同様です。
貯金はデフレの時に最強ですし、
金はインフレの時に威力を発揮します。
株価上昇による機会損失はあり得ますが、
現金とゴールドを増やしておくことはノーリスクです。
まとめ
多くの医者は、保険診療から給与をもらっています。
一度保険制度が揺らぐと、大きなダメージを受けます。
普段からこのことを意識して危機管理することで、
国家破綻が万が一起こったときにも慌てず対応できます。
冬の嵐が過ぎ去った後には、春がやってきます。
とにかく生き残ることが大切。
皆様も良い年になりますよう、お祈りしております。