開業医は誰しも儲けたい。
その思いはマリアナ海峡より深い。潜ったことはないが。
「患者に良い医療を提供する」はウソではない。
しかし、それと同じくらい儲けたい。
建前は要らない。本音で話す。
クリニックで儲けるには、腕よりコミュ力を磨け!
開業医の真実
二代目のわたしは、子供の頃から業界の話を聞かされて育った。
この世界も世間に漏れず、ゴシップが行き交う。
二世議員と同様、朱に交われば赤くなる。
医療界の作法が自然と身についた。
新規開業にはないメリットだ。
こんな噂話があった。
初代田中院長(仮名)
行列が出来る田中医院(仮名)があった。今もあるが、並んではいない。
行列は人気度合いをあらわす。銀行の取り付け騒ぎ以外は。
まさか現代で、シリコンバレー銀行のような取り付け騒ぎが起こるとは思わなかった。
ネットバンクの時代となり、預金引き出しはあっという間。
あれ、何の話だっけ?戻す。
初代田中院長は、人当たりが良く、優しく、丁寧な患者対応で評判だった。
噂がウワサを呼び、100kmも離れた村から、患者がやってくる。
「うわさを信じちゃイケないよ♪」(どうにもとまらない 作詞:阿久悠)と歌ったのは山本リンダだが、初代田中院長はマシュマロのように優しかった。
マシュマロはBBQで焼くと最高に旨いが、舌をやけどする。
いかん、戻す。
ある日、大病院に患者がやってきた。
明らかに黄色い。ミカンを食べたわけではない。ミカンを食べても目は黄色くならない。
そう、黄疸。
検査で胆のう癌と診断された。
主治医はかかりつけの田中医院へ電話して、状況を聞くことにした。
「ああ、あのヒトね、胆石があるでしょ」
主治医が病名を告げると
「えっ・・・・」
その後は言い訳の嵐だったそう。
二代目田中院長(仮名)
初代田中院長には、優秀な息子がいた。
県内屈指の進学校から、関東の医学部へストレートで入学。
受験にストレートはあるが、なぜカーブやスライダーはないのだろう?あ、ドロップはあるか。
主席で卒業し、父親と同じ分野へ進んだ。
留学もし、医局では研究と臨床で素晴らしい実績を残した。
「オヤジは優しいだけで、腕はない」
胆石事件を気にして、ひたすら研鑽を積んだ。
満を持して、クリニックを継承。
銀行も喜んで金を貸す。間違ってもシリコンバレー銀行ではない。
最新の設備をそろえ、建物もリフォームした。
愛想はイマイチだが腕は確か。誰もが成功を疑わなかった。
しかし・・・。
こう書くと、結末は見えるだろう。そう、患者は減少していった。
売り上げは平均的。しかし借金がベンチプレス100kg。
どのくらいの重さか?やっていないので、よくわからない。しかし、すごいらしい。
当然儲からない。貧困はヒトを不安にする。
院長のイライラがスタッフと患者に伝わる。
患者は遠ざかる。
今は100kmどころか、1kmの診療圏すら微妙なところ。
「腕は問題ないのに、なぜ患者が来ない?」
二代目田中院長は理由も分からず、今日も診療にあたっている。
なにが明暗を分けたか
はじめに言っておく。二代目田中院長は、とても優秀なドクターだ。
自分が患者なら、主治医になってもらいたいぐらいだ。
ではなぜ、儲かっていないか。
「時代」がキーワード。
初代田中院長の時代は昭和
懐かしき昭和は「お医者様」だった。
ドクターはふんぞり返り、エラソーな態度でしゃべる。
時に怒鳴る。患者は「自分が悪い」と思って、ひたすら恐縮する。
そんな時代に初代田中院長は「神様」。
患者の話を聞く、優しく話す。それだけで患者は感激する。
患者は患者を連れてくる。
大事なのでもう一度話す。
患者は患者を連れてくる。
口コミは恐ろしい。ネットのない時代でも100km先まで評判は伝わる。
医者としての腕はどうだったのか?
彼の臨床能力は、開業医の平均より少し良かった。
そう、決して悪くなかったのである。
大事なのでもう一度繰り返す。
腕は決して悪くなかった。
たまたま運悪く、初期の胆のう癌が見つからなかっただけだ。
二代目田中院長の時代は平成
彼は患者を怒らない。ただ、愛想がイマイチで、ぶっきらぼうなだけだ。
腕は確かなので、理性的な患者は付いてくる。
しかし多くの人はどうだろう?
笑顔がなく、無愛想。ナニを考えているのか分からない。
怖いと感じないだろうか?
平成から令和に入り、優しい開業医が当たり前となった。
無愛想は患者を遠ざけてしまった。
ネットの時代、口コミは100km先まで楽に届く。
さらに、そろえた機械は明らかにオーバースペック。
利益=売上-経費。
大事なので繰り返す。
利益=売上-経費。
経費過剰で利益が出ない。輪を掛けて理由が分からない。
イライラするのは当然だ。
明暗を分けたのはコミュ力!
二代目田中院長が昭和に開業していれば、とても繁盛していただろう。
しかし、現代のコミュ力が備わっていない。
ほんのわずか、笑顔を練習するだけで、劇的に改善するはずだ。
そしてもう一つ、大事なことがある。
オーバースペックは自己満足
首都圏や大都市は別かもしれないが、
開業医に必要なのは、広く浅い知識だ。
初期対応を行い、紹介すべき患者をセレクション出来れば、合格。
深い知見は宝の持ち腐れ。自己満足の世界。
オーバースペックでも、金がかからなければ、まだイイ。
自己満足のため、機械に投資しすぎた。
彼が誤ったのは、この一点だけ。
「儲からない開業」
コレが彼を今でも苦しめている。
最新の医療機械を勧めるメーカーの誘いに、乗ってはイケない。
まとめ:腕も大事!
オイ、何言ってんだ?
そうおっしゃりたいのも、ごもっとも。
でもね~、開業医って色んなのがいるんですよ。
以前「鉄欠乏性貧血で薬飲んでます」っていう、60歳台の女性が来た。
いつまで経っても治らないから、病院を代えたいと。
すぐに胃カメラと便潜血をやって、基幹病院へ紹介した。
進行胃癌。
ヒヤヒヤしたが、リンパ節転移なし。
既に5年以上経っているが、再発なし。
ホッとしている。
開業医としての最低限の腕は不可欠。
繰り返す。
開業医としての最低限の腕は必須。
見逃したクリニックは、もう閉院している。
~~~~~~~~~~~~
またブログを更新しようと思います。コレまでとは違うテイストで。
よろしければお付き合いください。