こんにちは。山のクマです。
3月29日、野村ホールディング(野村HD)が巨額の損失を被ったというニュースが出回りました。
野村HDが米で2200億円規模の損害も、巨額ブロック取引と関連か:Bloomberg
クレディ・スイス(クレディS)も、かなりの損害を受けています。
まだ全てが解明されたわけではありませんが、今後危機が広がるかどうか、注視する必要があります。
いったい何が起こったのか?金融危機に広がるのか?一個人投資家の視点で見ていきます。
なにぶん専門家ではないので、適切でない部分もあると思います。その点はご容赦ください。
何が起こったか
簡単に話すと以下の通りです。
投資会社のアルケゴス・キャピタル・マネジメント(アルケゴス)が倒産の危機に陥ったため、同社にお金を貸し付けていた野村HDとクレディSが損をして、しかも今後損失額が増える可能性がある。
現在のゼロ金利で大量の資金を借り(信用枠)、投資をしていました。レバレッジをかなり掛けていた状態です。
そのためわずかな投資の失敗で、甚大な損失につながりました。
アルケゴスがどのような取引をしていたかについては、高橋ダンさんがYouTubeに詳しく解説しています。
アルケゴス破綻、リーマンショック再来なのか? リスク管理の重要性:YouTube
他にも関与していた銀行はあります。
報道では、ドイツ銀行は損を出しておらず、ゴールドマン・サックス(GS)、モルガン・スタンレー(MS)は、たいした損ではないと公表しています。
4月1日になって、みずほFGも損失を被ったとニュースになりました。
みずほFGも米アルケゴスで損失、100億円規模の可能性-報道:Bloomberg
野村HDの損失額は3月30日時点で2,200億円。同社の年間純利益と同額です。
ウォール街の様子
金融機関全体では100億ドル(約1兆円)の損失とも言われています。
アーケゴス問題で世界の銀行損失100億ドルも、規制強化が焦点:ロイター
コトが明るみに出る前に投資銀行間で対策が協議されていましたが、責任をお互いになすりつけ合っています。
クレディSが目指したアルケゴス混乱回避策、各行の合意なく事態悪化:Bloomberg
事情に詳しい複数の関係者によれば、この事態に先立ち国際金融の世界の上層部では論争があり、すぐに責任のなすり合いや怒りに転じたという。各行は損害の集計を始めている。
大損が出そうになると我先にと売り抜け、お互いに責任をなすりつけ合う。これはリーマンショックと同じ光景です。
野村HDとクレディSは、ウォール街の老舗GSとMSに出し抜かれました。
なお、こちらのサイトで詳しい経過が分かりやすく載っています。
野村、三菱、みずほ、次は?欧米市場も注視:豊島逸夫による金市場解説(三菱UFJ信託銀行)
リーマンショックとの違い
2つの点が違います。
一つ目は、株という売りやすい、つまり流動性の高い商品が取引に使われているコトです。
アルケゴスは借金の担保として、株を金融機関に差し出していました。同社が危ないという情報で、GSとMSは担保株をマーケットの外で大量に売却しています(ブロック取引)。
リーマンショックの時は不動産担保証券(MBS)など、流動性の低い商品であったため現金化できず、金融危機が一気に広がりました。
二つ目は連邦準備制度(FRB:米国の中央銀行)と米国議会の態度です。
リーマンショックでは、マネー不足に陥った投資銀行に対して、FRBがドルを注入することに議会が猛反対していました。
FRBと政府はさまざまな手法で議会対策をし、何とかドル不足に対処しました。
まだアルケゴスの件でFRBは動いていませんが、リーマンショック以降かなりのドルを発行しています。
もう米国議会もマーケットも金融緩和が当たり前になっているため、今後危機が広がると速やかに資金を注入するでしょう。
まだマーケットは金融危機になると思っていない
アルケゴスの件以降、株式市場は変化していません。
金融危機に至らないだろうと、多くの参加者が踏んでいるようです。
確かに流動性は問題ないですし、中央銀行もマネー注入すると踏んでいるのでしょう。
でも既にかなりの通貨を発行しています。大丈夫なのか?
中央銀行はどこまでマネーを発行できるのか?
これは、よくわからないところです。
歴史的にみると、マネー過剰発行の行く先はインフレです。
でも、今多くの国で、物価は落ち着いています。
「今回は違う、大丈夫!」
”This time is different!”
この言葉、バブル崩壊直前に必ず言われてきた有名な文句なのです。
根本に立ち返ります。
円、ドル、ユーロなどの法定通貨は、どうして多くのヒトに信用されているのか?
日本銀行のバランスシートを見ると、円は「発行銀行券」として「負債」の欄に記されています。では通貨という負債を担保するモノはなにか?ゴールドや日本国債です。
FRB、ヨーロッパ中央銀行(ECB)も同じ構造です。
つまり、法定通貨は各国の国債に価値を裏打ちされています。
法定通貨を過剰発行するには、国債も増発しなければいけません。
今は国債の金利がゼロパーセント近辺と低くなっていますので、返済にはあまり困っていません。
実際MMTでは、円、ドル、ユーロなどはいくら発行しても問題ないとしています。しかし、MMT理論には、マーケットの実情が抜けています。
法定通貨や国債の取引をしているのは、金融市場です。円、ドル、ユーロ、国債が市場参加者の信用を失うと、あっという間に売られます。暴落です。
今後アルケゴス危機が金融崩壊につながる可能性は、十分あると思っています。
なおこちらの本が、法定通貨の根本を暴いてくれます。
マネーの正体
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まとめ
以上、野村HDの巨額損失とその背景を見てきました。
我々が参加している金融市場には、ウォール街が巨額の取引をしています。下手に個人投資家がリスクを取ると、あっという間に破綻します。
自分はゴミ投資家だと認識し、慎重に投資行動するコトが大切でしょう。
また、リーマンショックの時には中央銀行が助けましたが、今回は既に日米欧の中央銀行がマネーを大量に発行しています。
今後中央銀行の危機、つまりドルや円の危機がマーケットに認識されたときには、大崩壊となってしまうでしょう。
その時は、ゴールドの出番です。こちらのブログも参考にしてください。
歴史は繰り返す。ウォール街の気質は変わっていません。素晴らしい描写でリーマンショックを描いています。
リーマン・ショック・コンフィデンシャル(上)
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