投資の世界では、「成功談」ばかりが語られがちですが、実際には多くの人が失敗を経験しています。
医師投資家も同じです。
そして、その失敗には共通するパターンがあります。
今回は、私自身が挑戦したシステムトレードの失敗談を振り返ります。
最初は順調に利益を積み上げていたものの、やがて市場の急変に翻弄され、最終的には500万円を失うことに。
失敗の原因は何だったのか? そして、そこから何を学んだのか?
この経験を通じて得た教訓は、特に経験豊富な医師投資家にとって有益なものだと確信しています。
それは、
「高レバレッジ」「勉強不足」「強欲」
この3つの罠を避けることが、投資成功への第一歩なのです。

システムトレードを作ってみた
投資の世界では、感情が判断を狂わせることが多々あります。
そこで、2019年の半ばにエクセルを使ったシステムトレードを作成しました。
システムトレードとは?
システムトレードとは、投資家の主観を排除し、過去の値動きのデータに基づいて機械的に取引を行う投資手法です。
これにより、感情に左右されることなく、一定のルールに従った取引が可能になります。
エクセルで売買シグナルを自動化
日経平均の過去データをエクセルに入力し、売りシグナル・買いシグナルが自動で出るように設計しました。
シンプルなロジックでありながら、過去20年分のデータを入力した結果、総利益は2,000万円、最大の損失(ドローダウン)は200万円程度と、かなり良好な成績を示しました。

試験運用から本格運用へ
数ヶ月間の試験運用を行い、利益が安定して確保できることを確認した後、2019年12月に日経先物ミニで本格的な運用を開始しました。
証拠金(軍資金)は300万円。
先物取引はFXと似た仕組みを持ち、レバレッジ(借金)を活用できるため、比較的少ない資金で大きな取引が可能です。
しかし、過去と未来は違った
順調に思えたシステムトレードでしたが、現実は甘くありませんでした。
バックテストで良い結果が出たからといって、未来も同じように機能するとは限らないのです。
「過去と未来は異なる」という投資の厳しい現実に直面することに。

追い証発生
システムトレードを本格運用し、最初のうちは数万円の利益が出ていました。
しかし、相場は常に一定の法則に従うわけではありません。
損失が膨らむ日々
順調に見えたのも束の間、損失が続き、気がつけば損失額は250万円を超えていました。
証拠金が不足し、ついに証券会社からマージンコール(追い証)が発生。
これは、追加の資金を入れないと強制決済されるという警告です。
「まだいける」という過信
今振り返ると、この時点で損切りすべきでした。
しかし、当時の私は「そんなはずはない」「一時的なドローダウンだ」と考え、冷静な判断ができませんでした。
循環器内科医として緊急の場面は数々立ち会ってきており、切迫した状況での感情コントロールは慣れているつもりでした。
しかし追い証は投資経験でも初めてのことで、医師としての経験はまったく役に立ちません。
結局、さらに200万円を追加投入し、トレードを続行することに。
予想外の展開
資金を追加したものの、相場の動きは依然として厳しく、精神的にも追い込まれていきました。
しかし、そんな中で最後の幸運が訪れることになります。

コロナ・ショック
2020年2月20日、世界を揺るがすコロナ・ショックが発生しました。
株式市場はパニックに陥り、日経平均も急落。
多くの投資家が慌てる中、この暴落は私にとってまさに「最後の幸運」となったのです。
まさかの500万円の利益
偶然にも、私は「売り」ポジションを持っていました。
相場が下がるほど利益が増えるショート戦略が、ここで炸裂。
市場が崩壊していくのを横目に、口座残高は膨らんでいきました。
気がつけば、利益は500万円に到達。
まさにシステムトレードの真骨頂を見た瞬間でした。
だが、シグナルは沈黙
しかし、ここで問題が発生しました。
本来なら「買い戻し」のシグナルが出るはずなのに、どれだけ待っても出てこない。
システムを信じてそのまま保持すべきか、それとも手動で利益を確定すべきか・・・。
「強欲」という罠
私は迷いました。
システムトレードの原則は「主観を排除する」こと。
人間の判断を入れた瞬間、それはシステムトレードではなくなる。
そう考え、私はポジションをそのまま維持することにしました。
しかし、その時の私は、心の奥底でほくそ笑んでいました。
「このままいけば、利益は1000万円になるな」と。
この「強欲」こそが、私を奈落へと導くことになるとは、この時はまだ知る由もなかったのです・・・。

FRBの量的緩和 – すべてが逆回転する瞬間
コロナ・ショックで市場が崩壊し、売りポジションで500万円の利益を出していた私は、さらなる利益を夢見てポジションを維持していました。
しかし、歴史的な転換点は突然訪れます。
FRBの市場介入
米連邦準備制度理事会(FRB)は、コロナ危機に対して次々と金融対策を発表。
その中でも決定的だったのは、2.3兆ドル(約250兆円)もの資金を市場に投入する量的緩和策でした。
株価の急回復と利益の蒸発
FRBの資金投入により市場は急速に落ち着きを取り戻し、株価はV字回復を始めました。
日経平均も例外ではなく、怒涛の上昇。

私は売りポジションを持っていたため、利益は見る見るうちに減少し、ついには損失に転落。
500万円の溶解と撤退
利益を確定するチャンスはいくらでもありました。
しかし、決済シグナルは出ません。
「まだいける」「もっと増えるはず」という欲に駆られ、システムに頼り切った結果、500万円の利益は完全に溶けました。
最終的には損失を抱え、システムトレードから撤退することをようやく決意しました。

なぜ失敗したのか?
システムトレードに全てを託し、一時は500万円の利益を出したものの、最終的にはすべてを失いました。
その原因を振り返ると、大きく3つの理由が浮かび上がります。
1. 高レバレッジの罠
振り返ってみると、私はシステムトレードに7倍ものレバレッジをかけていました。
手元資金300万円で、なんと2,100万円分のトレードをしていたのです。
レバレッジは、上手くいけば少ない資金で大きな利益を得られますが、逆に相場が予想外に動くと一瞬で資金を溶かします。
FXで破綻する個人投資家の大半が、この「過剰レバレッジ」によるものです。
冷静に考えれば、個人投資家は2~3倍程度のレバレッジで運用すべきでした。
2. 圧倒的な勉強不足
もう一つの敗因は、金融市場の変化を理解していなかったこと。
過去20年のデータで利益が出るからといって、今後も通用するとは限りません。
それはシステムトレードを組んでも同じ事。
特に、コロナ・ショック後のFRBの量的緩和策は、その影響を完全に予測できていませんでした。
もし機関投資家並みにシステムトレードを運用するなら、過去データだけでなく、市場環境・中央銀行の政策・マクロ経済の動向まで深く理解する必要がありました。
結局、知識不足が大きな損失を生む結果となりました。
3. 最大の敵は「強欲」
しかし、最も大きな敗因は「強欲」でした。
コロナ・ショックで500万円の利益が出たとき、私は「このままいけば1000万円は固い」と思い込みました。
システムトレードのシグナルが出ないことを言い訳にし、冷静な判断を放棄。
実際には、システムを守ったのではなく、自分の欲望を守ってしまったのです。
「暴落時の狼狽売り」も投資失敗要因として語られますが、これも強欲が生んだ結果です。
どんな投資でも「欲をかきすぎない」ことが最も重要。
私はそれを身をもって学ぶことになりました。

失敗から得たモノ
損失500万円という痛みを伴う経験でしたが、一方で得られたものも確かにありました。
それは「機関投資家の心理状態の追体験」です。
プロのトレーダーの視点を知る
機関投資家やプロのトレーダーは、膨大な資金を高レバレッジで運用しています。
そのため、マーケットの上下によって心理的に大きく揺さぶられることになります。
私はそれを実際に経験しました。
マージンコールの恐怖
特に、ポジションとは逆方向にマーケットが動いたときの恐怖は、想像を超えるものでした。
マージンコールが発生し、追い証を入れるか損切りするかの決断を迫られる瞬間のプレッシャー。
これは本当に「生きた心地がしない」ものでした。
精神的ストレスはドクターの比ではありません。
プロのトレーダーたちも、こうした極限状態の中で判断を下しているのだと実感しました。
今後に活かせること
この経験を通じて、機関投資家がどのような局面でパニックを起こし、どのような動きをするのかを、類推できるようになったと考えています。
マーケットの動きは単なる数字の羅列ではなく、そこには「人間の心理」が色濃く反映されています。
今後は、この心理を読み解くことが、トレードを有利に進めるヒントになるかもしれません。
失敗を単なる失敗で終わらせず、次のステップに活かす。
それこそが、投資の本当の学びなのかもしれません。

まとめ
今回は、私自身の投資失敗談を振り返りました。
ネット上にも多くの医師の投資失敗談が見られますが、その大半は 不動産投資の失敗に関するものです。
興味深いことに、不動産投資の失敗理由も、今回のシステムトレードの失敗と共通点があります。
それは、「高レバレッジ」「勉強不足」「強欲」。
この3つの罠にハマると、投資はあっという間に破綻してしまうのです。

投資のリスク管理の重要性
幸いにも、私は投資全体の資産に大きな影響が出る前に撤退できました。
投資で損をすること自体は問題ではありません。
しかし、大半の資産を失って完全撤退してしまうと、将来的に資産を増やすチャンスも失ってしまいます。
今後の投資スタンス
これからも大きなダメージを受けないように、楽しく・冷静に投資を続けていきたい と思います。
リスクを管理しながら、成長の機会を逃さず、より良い投資戦略を模索していく——それこそが、今回の失敗から得た最も大きな教訓かもしれません。
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