臨床

高齢者心房細動はこう診る

高齢者心房細動はこう診る
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こんにちは、山のクマです。

心房細動の診察。大変です。

なぜ大変か?

・高齢者に多いから

そのため

・飲んでいるクスリが多い
・薬をきちんと飲んでくれない
・腎機能とにらめっこ
・併存疾患が多い
・DOACで出血の危険がある
・きちんと治療しても脳梗塞になりやすい
・家族の意向に左右される
・治療方針がヒトによって異なる

高血圧の倍、時間がかかります。

高齢者は増える一方なので、心房細動患者も増え続けます。

どう治療したら良いか?ワタシと同じく頭を抱えている先生も多いでしょう。

今回は山下武志先生の「心房細動の歩みかた」(山のクマおすすめ↓)を元に、考えてみます。

ポイントは「腎機能」と「余命と長期予後のバランス」です。

まず注目すべきは腎機能

心房細動治療の要点は、脳梗塞予防と心不全予防です

特に脳梗塞予防は患者の一生を左右するため、とても重要です。

脳梗塞予防と言えば、DOAC(直接経口抗凝固薬)。

現在4種類のDOACが使えますが、腎機能と体重は「必ず」調べクレアチニンクリアランスを計測する必要があります

やっかいなことに、血清クレアチニンって体調や季節でカンタンに変わるんですよね。

特に夏は、脱水から腎機能が低下するため、DOACの基準を下回らないかヒヤヒヤします。

こまめな採血と体重測定は必須です

なおカテーテルアブレーション後の再発率も、腎機能悪化例では高くなります。

DOACと内服アドヒアランス

4種類あるDOAC。

以前使い分けを書きました。

循環器専門医が考えるDOACの使い分け
循環器専門医が考える抗凝固薬(DOAC)の使い分け:心房細動の脳梗塞予防こんにちは。山のクマです。 心房細動治療(薬物)ガイドラインによると、心房細動の有病率は、80歳以上で 男性 4.43% ...

山下先生は本の中で、次のように言及しています。

・カテーテルアブレーションを行う患者
ダビガトラン(中和薬が存在するため)

・CCrが50mL/分以上の患者
リバーロキサバンもしくはエドキサバン

・CCrが40~50mL/分以上の患者
エドキサバン

・CCrが15~40mL/分未満の患者
アピキサバン

(p36)

腎機能以外に重要なのが、内服アドヒアランスです

ワルファリンは半減期が長く、多少内服アドヒアランスが悪くとも脳梗塞予防効果は認めます。

しかしDOACは全て作用時間が短いため、内服アドヒアランスが予防効果に直結します

各DOACの詳細は、以下の本に詳しく載っています。




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山下式生物学的年齢計算式!?

本書の中で、とても印象的な文があります。

ヒトは段階的に老化する(p 166)

加齢に関するタンパク質、生理学的加齢スコア、自院のデータとしてeGFRを挙げ、このことを示しています。

うむ、確かに「急に年を取ったなー」と感じることはありました。

35歳から急に当直がキツくなり、50歳から急に外来患者数をこなせなくなりました。

こんな感覚的なことが、データで提示されるとは思ってもみませんでした。

さらに山下先生は生物学的年齢にも注目しており、その計算式を大胆にも示しています。

120-eGFR=生物学的年齢(Cr>0.6の時)

eGFRは20歳で100となり、年1ずつ下がるので、このような式を考案したのだとか。

いやー、すごいですね。

確かに暦年齢より若いなーと思う高齢者はいっぱいいます。

この式を念頭に外来をしていますが、感じたのは以下の3点です。

1)あくまでも暦年齢80歳以上で意味があるだろう
2)カテーテルアブレーションなどの侵襲的治療を勧めるか判断する材料としては意味があるだろう
3)糖尿病でeGFRが実際より高いヒトは要注意

でも、なぜ腎臓が加齢と関係するのでしょう?

腎臓は血管の集まりであり、腎機能や尿蛋白量は動脈硬化を反映すると専門医から聞きました。

加齢は動脈硬化により起こるとも考えられるため、

腎機能低下→動脈硬化の進行→加齢

という構図なのでしょう。

アウトカム競合という悪魔

高齢者は本当に併存疾患が多い。

高血圧、糖尿病、骨粗鬆症、高脂血症、ガンの術後・・・。

フレイルも高率にみられます。

そのため、心房細動だけを診ていれば良いわけではありません

でも併存疾患に対してガイドライン通り処方していくと、どんどん薬が増えます

クスリが増えると、必ずポリファーマシーの問題に直面します

つまり、ガイドラインは併存疾患が多くなるほど威力を失うのです

高齢者に対する全人的医療のエビデンスはありません。

一人一人年の取り方は違うので、個々人の現状を踏まえた治療が必要です

本当に大変です。

ただ、本の中では以下のように書かれています。

同時にこの研究(AFIRE study)は、複数の疾患が併存する患者の治療においては単なる足し算がつねに正しいわけではなく、「減薬」が正しいこともあるという、引き算に関する初めてのクリニカルエビデンスとも言えるでしょう(p 111)

これから、このような大規模研究がたくさん出てくることを期待します。

まとめ

山下先生は昔から、最前線で診療しながら最先端の研究にも従事しています。

そのアクティビティーに頭が下がります。

良い意味で町医者の感覚を兼ね備えており、我々開業医にはとてもありがたい情報を発信しています。

1990年代からの30年は、不整脈診療において大きな変化をいくつも迎えました。

抗不整脈薬の失墜、カテーテルアブレーションの台頭、植込み型除細動器の普及などなど。

また30年で高齢者も増えました。心房細動患者も激増しています。

開業医と社会にとって心房細動診療の進歩は、最もインパクトがあります

この本は「心房細動診療の歩みかた」という題ですが、実は「心房細動診療の歩み」です

同時に「高齢者医療の歩みかた」でもあります

全てのドクターに読んでいただきたいです。

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