9月のFOMC(連邦公開市場委員会)で利下げを発表しました。
マーケットは好感し、株価は上昇に転じています。
利下げは企業の資金調達、消費者のローンなどの金利が下がることに繋がります。
企業利益や個人消費の増加から、今後も株価も上昇すると、多くのメディアやインフルエンサーが報じています。
しかし本当でしょうか?
経済の深いところを見ると、全く逆の結論になります。
個人的には今後、株は下がる可能性が高いと考えます。
理由は2つ。
1)利下げの理由は景気後退であり、企業利益と個人消費は減って、株は下がる
2)利下げは米国外からの投資減少を起こし、株は下がる
今回もレバナス一本リーマンの動画とビジネス知識源を参考にしています。
あくまで個人的見解です。投資は自己責任でお願いします。
1)利下げの理由はインフレ沈静化ではなく景気後退
FRB(米国連邦準備制度理事会)は利下げの理由として、インフレの沈静化と経済成長の刺激を第一に挙げています。
しかし、本当の理由はそこではありません。
直近の米国インフレ率は2.4%と、目標とする2%に到達していません。
従来なら金利据え置きか、利下げするにしても0.25%だったでしょう。
しかし10月はその2倍、0.5%の利下げでした。
ほとんどの投資家は「ダブル利下げの理由」を深く考えていません。
FRBとFOMCに課されている法的使命は「最大雇用と物価安定」の二つ。「デュアル・マンデート(Dual mandate)」と呼ばれています。
米国インフレ率は低下傾向で、失業率は4.1%と、自然失業率と同レベル。
今の段階でダブル利下げを行うべきエビデンスはありません。
むしろ数値に表れていない景気減速を認識したため、ダブル利下げに踏み切ったのではないでしょうか?
FOMC委員のカシュカリさんも「米労働市場悪化なら、利下げ加速も必要」と発言しています。
そもそもインフレ対策としての利上げは、企業や消費者がお金を使わなくする政策。
モノやサービスが売れなくなれば価格が下がり、インフレは沈静化します。
既に企業や家計はインフレと利上げで苦しくなっており、高級品は売れず、日用品購入にも難儀しています。
日用品メーカーP&Gの決算は、モノが売れずに減収となりました。
数多くの小売店舗が、消費者の財布が固くなった結果、閉鎖に追い込まれています。
消費者はクレジットカードローンで苦しい家計を回していますが、クレカ滞納率は上昇し、米国銀行の決算が悪化するほどになっています。
半導体製造装置のASMLが予想下回る利益となる一方、高性能半導体メーカーTSMCは好調なAI需要で良い決算でした。
車や家電に使われる半導体の需要が急減していることから、日用品を買うにも四苦八苦し、贅沢品には手が回らない消費者像が浮かび上がります。
企業業績と個人消費は今後ますます冷え込むため、利下げは株価上昇にはつながらないと考えます。
さらに、米国株を買っているのは米国人だけではありません。
外国人の動向も見る必要があります。
2)利下げで米国からマネーが流出する
米国の金融マーケットには、世界各国からのマネーが流入しています。
どの程度の規模か?詳しいデータはないため、フェルミ推定を使います。
化石燃料関連株のうち、401kや退職金年金基金などの米国国民資金の割合は約20%です。
NY証券取引所上場会社全体でも、およそ20%でしょう。
米国株に投資するには、投資信託を購入するのも一般的。
バンガード、ブラックロック、ゴールドマンサックスなどの資産運用会社は、租税回避地から投資をしています。
その額は、資産規模から米国株のうち50%程度でしょう。
資産運用会社に集まる海外資金は、国ごとのGDPを参考にします。
米国は約20%ですが、投資比率を考えると50%くらいではないでしょうか。
つまり、米国以外を50%とすると、ファンドによる海外マネーは50%×50%=25%となります。
ファンドを通さず直接米国株を買う海外の個人・法人・政府は、25%にはなるでしょう。
以上から、海外から米国金融マーケットに流入しているマネーは、全体の半分位ではないかと想定します。
なおperplexity proに聞いてみたところ、一発で答えが出てしまいました・・・すごすぎる。
NY証券取引所とナズダックに上場している企業への海外ファンドからの投資額の正確な割合は公開されていませんが、利用可能なデータから推測すると、おおよそ40%程度と考えられます。以下にその根拠を示します:
1. 米国の株式所有構造に関する分析によると、2019年時点で外国投資家が米国企業の株式の約40%を所有していました。この割合は過去数十年で大幅に増加しています。
2. 2022年のデータによると、米国への外国直接投資(FDI)ストックはGDPの約41.1%に相当する10.46兆ドルに達しています。
3. 製造業セクターが外国直接投資の42.4%を占め、最大のセクターとなっています。その他、金融・保険(10.6%)、卸売業(9.7%)なども大きな割合を占めています。
4. 主要な投資国は日本(13.5%)、イギリス(12.6%)、オランダ(11.7%)、カナダ(11.2%)、ドイツ(8.2%)などです。
これらのデータから、NY証券取引所とナズダックに上場している企業への海外からの投資は、全体の約40%程度を占めていると推測できます。ただし、この割合は常に変動しており、市場の状況や国際的な投資動向によって変化する可能性があります。
また、この推定値は全ての海外投資を含んでおり、海外ファンドだけでなく、外国政府、企業、個人投資家からの投資も含まれていることに注意が必要です。
参考文献
https://santandertrade.com/en/portal/establish-overseas/united-states/foreign-investment
https://taxpolicycenter.org/taxvox/who-owns-us-stock-foreigners-and-rich-americans
https://www.bea.gov/news/2024/us-international-investment-position-1st-quarter-2024-and-annual-update
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海外から米国に集まった投資は、利下げでどうなるか?日本人投資家の立場で考えてみます。
日本人投資家は利下げでどう動く?
普通預金金利は0.02~0.3%に対し、ドル外貨預金は4%程度。米国債も4%です。
円をドルに換えて預金しようとする人も、増えるでしょう。
富裕層も米国債を購入し、金利でキャッシュフローを得ようとします。
日本企業も海外での売上は円に戻さず、米国債でドルのまま運用する方が合理的です。
つまり日米の金利差が大きいと、円安ドル高です。
米国が利下げをすると日米金利差が縮み、うまみがなくなります。
その結果、ドルを売って円に戻す円高ドル安に。
円高は株にも影響します。
今のところ米国株は右肩上がりで、円安も手伝って新NISAでは米国株関連ファンドが人気です。一番人気は「オールカントリー」ですが構成比は60%が米国株。
円高に振れると、ドル建てでは横ばいでも円ベースで価格が下がり、含み損がでます。
積み立て投資では、安くなっても継続することが推奨されています。が、
行動経済学が証明したように、人間は損に弱い動物。
投資家は損に耐えられず、ファンドを売るでしょう。
オルカンを売って円に換えることは円高ドル安をさらに加速させ、ますます米国株から資金が抜けてゆくことに。
以上の流れが全世界的に起こってくると、利下げは株高ではなく、株安につながります。
メディアや経済系インフルエンサーが考えるほど、単純ではありません。
まとめ
メディアではなぜ利下げ=株価上昇と短絡的に考えるのでしょう?
行動経済学の知見である、システム1=直観の発動です。
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ほとんどの投資家は、思索を奥まで勧めません。
短期ならそれでも上手く行くときが多いですが、10年単位の長期でみると、システム2=熟慮モードを立ち上げた方が成功します。
メディアの情報をうのみにすると、せっかくの投資があだになってしまいます。
「そもそも」インフレ対策としての利上げは、人びとの需要を減少させる政策=モノ・サービスを買いにくくすること、です。
その結果ヒトの消費意欲は低下し、モノ・サービスが売れずに価格が下がり、インフレ率が下がってきます。
インフレ「率」は下がっても、物価は高いまま。下がった消費意欲は、多少の利下げでも落ち込んだままです。
さらに利下げはドル安を招き、資金が米国から抜けてゆきます。
今のドル高は一時的でしょう。
個人消費の減退と米国からの資金流出は、株安に発展する可能性が高い。
メディアとインフルエンサーはココを見逃しています。
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