こんにちは、山のクマです。
コロナ禍で各国政府の財政出動が続いています。財源は国債ですが、日本も国債残高1,100兆円(GDP比237%)で、主要先進国の中で最大です。
個人的に、「これを返せるのか?」「日本は財政破綻=デフォルト=債務不履行するのではないか?」と危機感を持っています。
しかし政府は、さらなる国債発行を行って財政出動を続ける方針です。
これは、政策としてMMT(Modern Money Theory:現代貨幣理論)を採用しているからです。
焦点:「疑似MMT」実践する主要国、問われる長期リスク管理能力:ロイター
MMTとは、ごく簡単に説明すると
「日本や米国は自前で円やドルを発行できるんだから、いくら借金しても、お金をどんどん刷れば返せるんだ!家計と一緒にするな!」
という理論です。
これ、本当でしょうか?今回の記事ではMMTを取り上げ、さらに医者の収入がどうなるかを考察します。
結論から述べると、デフォルトはしないものの、我々の生活はものすごく大変になりそうです。
日本国債残高について
日本は戦後しばらくは国債発行額を抑えてきましたが、1990年代から急激に増えています。
少子高齢化による社会保障費増大のためですが、コロナ禍で、さらなる財政出動が必要になってしまいました。
MMTとは
まとまっている本はこちらです。
「財政赤字の神話」ステファニー・ケルトン→Amazon.co.jp
ステファニー・ケルトンさんは、米国民主党バーニー・サンダース氏の参謀の一人でした。今はニューヨーク州立大学ストーニーブルック校の教授で、専攻は経済学、公共政策です。
本の中では米国のケースで書かれていますが、日本でも通用すると、彼女は述べています。
「日本国債はデフォルトするか?」の問いに対しては、MMTでは、「デフォルトしない」となります。
なぜデフォルトしないのか?
一般的に、政府会計は家計に例えられます。
家庭では収入の一部を借金の返済に充てます。そのため借金が増えた場合、収入を増やして支出削減を行なわないと、返済不能になります。
しかし政府は日銀に頼んでマネーを作ることが出来ます。しかも国際的に信用の高い「円」です。
借金しても自前で作ったお金で返すことが出来るため、返済不能にはならない。
これがMMTの骨子です。「政府会計と家計は違うんだ!」と。
いや、すごい理論ですね!
MMTの問題はインフレ
じゃんじゃん通貨を発行すると、市中にお金があふれ、インフレが起きやすくなります。
MMTではその対策として「政府支出削減」と「増税」を挙げています。
インフレの芽が出てきたら、失業対策や社会保障費などの政府支出を減らして緊縮財政を敷き、通貨発行量を減らす。
また増税により市中にあふれたお金を回収する。
以上の2つで、インフレを抑えるそうです。これ、やっていることは家計と一緒のような気がしますが・・・。
著者はMMTを納得させることに、苦労した
多くのヒトにとって、「日本や米国の国債はデフォルトしない」とするMMTは、とても違和感があります。
著者も米国の民主党内、政権内でMMTを納得させることに、大変苦労しています。そりゃそうです。
MMTへの疑問点
おおざっぱにMMTを見てきました。いくつもの疑問点があります。
緊縮財政や増税は可能か?
2000年代の日本を見ると、緊縮財政による政府収支を黒字にするという目標を掲げていましたが、出来ていません。
また、増税を行った内閣は不人気となり、首相交代や政権交代となっています。
政治家が国民の支持の元に働いている以上、民衆の痛みを伴う緊縮財政や増税は、簡単には行えないでしょう。
マーケットにMMTを納得させることができるか?
MMTでは、「マーケットが国債や円の価格・価値を決定している」という事実が完全に無視されています。
市場参加者である機関投資家、個人投資家にMMTを納得させるのは、困難でしょう。政権・政党内に納得させることも、大変だったのですから。
市場参加者は、国債増発、通貨増発を行ったとき、財政破綻を意識して取引するでしょう。
MMTではインフレを止めることが出来ないだろう
増税や緊縮財政ができず、市場参加者が財政破綻を意識したとき、どうなるでしょう?
マーケットで国債売り、円売りが進行する
財政破綻が意識されると、日本国債や円が売られ、国債下落(=金利上昇)と円安になります。
その結果
・輸入価格上昇による物価上昇
・金利上昇から国債償還(=返済)にさらなる通貨発行が必要になる
といった点から、インフレが進行するでしょう。
本当に日本国債はデフォルトするか?
デフォルトを起こすと、国債マーケットでの取引ができなくなるため、おそらく起こさないでしょう。
そうなると、インフレがかなり進行した状態で、ようやく増税、緊縮財政を導入することになると思われます。
もしくは通貨切り下げでしょうか?俗に言う「デノミ」です。
医者の収入はどうなる?
以上、MMTについて見てきました。
MMTが破綻する可能性を述べてきましたが、上手く回る可能性もあります。
この2つの状況で、我々の懐事情はどうなるでしょう?
MMTが上手く回ったとき
MMTでは、インフレの芽が出てくると、政府支出を減らします。
日本で最も多い政府支出は社会保障費で、診療報酬費にもココからお金が流れています。
つまり、MMTが上手く回っても、診療報酬費は下がるか、患者自己負担分が増えます。これは収入減少となります。
しかも増税が待っています。我々の生活は厳しくなります。
MMTが破綻したとき
インフレが進行し、保険診療という「公定価格」で収入を得ている医療関係者は、購買力が低下します。
つまり、収入減少と同じ状態です。
またインフレを鎮めるためには、やはり政府支出の削減と増税が必要となり、結局、診療報酬費が下がります。
どう対応する?
収入を保険診療だけに頼っているのは、危険です。自由診療を積極的に取り入れるか、様々な投資で身を守る必要があります。
本の中でも、「『資産インフレ』が起こるリスクがある」と述べています。
すでに、株価、金は値上がりしています。増発された通貨が流れ込んでいるためです。
こちらのブログに書いたとおり、インフレの時にはゴールド、不動産、株などの資産が有利です。
まとめ
じっくり考えて来た結果、MMTが成功しても失敗しても、多くの医師が困窮化する可能性が高い、という結論になりました。
自分でもこの結果に驚いています。今、資産運用の勉強を加速させているところです。
もちろん、このブログの内容が間違っていて、問題なく推移する可能性もあります。そうなることを、祈っています。