今、マーケットは下落しています。
原因は、インフレを抑えるための利上げ。
機関投資家はレバレッジかけて=借金をして、投資しています。
利上げになると経費がかさむため、手持ちの株や債券を売って現金化します。
売りが多く、値が下がっています。
下落が緩やかなモノになるか、暴落になるか、様々な見解があります。
そんな中、こんな本を読みました。
大暴落!
著者の澤上篤人氏は「さわかみファンド」代表。
「今は金融バブル崩壊前夜であり、未曾有の大暴落のため金融と経済が大混乱に陥る」と警告しています。
うーむ、過激。でも一聴に値します。
そこで今後の展望を考えてみました。
ソフトランディングか?
この本が書かれたのは2021年6月。この頃S&P500は4,300ドルでした。
その後2022年1月の4,800ドルをピークに下がり続けています。
FRB(米国の中央銀行)がうまくソフトランディング(軟着陸)に持って行っているようにみえます。
でも、本当にこのまま行くのでしょうか?
インフレがやっかい
今、全世界でインフレが進んでいます。
その原因は資源高と物流停滞。
問題なのは資源高。
西側のロシアへの経済制裁は当面続く予定ですが、
中国、インド、中東などがロシアから買っているためです。
資源高と物流停滞のインフレに対して、利上げは鈍い刀。
そりゃそうです、原因治療になっていないんだから。
でも、中央銀行には利上げしか方法がありません。
インフレに利上げが加わると、不景気になります。
すでにスタグフレーション前夜
先日の日銀短観では、ポストコロナで景気は上向くとみる企業が多いモノの、
原材料費の高騰を十分価格に転嫁できず、利益が圧縮されている様子も分かります。
そのため賃金は上がっていません!
今後コスト高に耐えきれず、各社値上げに踏み切るでしょう。
賃金が上昇せず、値上げが進むと、物が売れなくなります。
不況です。
でも資源高と物流停滞のインフレは止まらない・・・。
スタグフレーション目前です。
スタグフレーションの歴史は?
戦後のスタグフレーションは、1970年代までさかのぼります。
当時、中東戦争などでオイルショックが起きました。
そう、今と同じ状態です。
すごいですよ、金利15%まで上げています。
インフレは収まって行きましたが、不況が長引きました。
利上げはコストプッシュインフレに対して、切れ味が悪いと歴史は教えてくれます。
いま金利を10%にしたらどうなる?
各国中央銀行は、大量の国債を抱えています。
金利と国債価格は逆に動くので、
FRB、ECG(欧州中央銀行)も同じです。
こんな状態で、金利調節という中央銀行の仕事が出来るんでしょうか??
今こそ歴史に学ぶとき
スタグフレーションを脱した1980年半ば以降、マーケットは順調に伸びてきました。
2000年のドットコムバブル崩壊、2008年のリーマンショック、2019年のコロナショックはありましたが、
中央銀行は利下げ、さらに通貨増発で経済を支えてきました。
今の投資家は、マーケットが下落すれば中央銀行が助けてくれると思っています。
でも、国債を大量に抱えた中央銀行は、次のバブル崩壊では思い切った利下げや通貨増発が出来ないでしょう!
その時どうなるか?
澤上さんは本の中で、こう述べています。
あの頃(1970年代)の悲惨な状況(スタグフレーション、高金利による債券下落)を経験している債券運用者は、もうほとんど現役を退いた。今は債券投資の恐ろしさを知らない運用者たちばかりだ。
そんな彼らの眼前に、債券市場の暴落相場が襲ってきたら、一体どんなパニックとなるのだろう?
恐怖で売りまくっている若きトレーダーが目に浮かびます。
そう、今こそ悲惨な時代を知っているベテランの出番です。
ベテラントレーダーは語る
澤上さんは御年75歳。1971年からマーケットに携わり、金利上昇のヒドイ時期を過ごしています。
もう1人、藤巻健史さん。御年72歳。ヒドイ時期を引きずっていた1980年からトレードに携わっています。しかも専門は日本国債。最前線で切った張ったを経験しています。
このお二方が「日本破綻論」で警鐘を鳴らしています。
「日本は財政破綻しない!」と主張している面々は、MMT(現代貨幣理論)を根拠としてます。
MMTは1990年代になって確立されてきた理論。しかも提唱者は学者!
アカデミックな連中は、1970年代の金利上昇、スタグフレーションも数値化してしまい、怖さ、恐怖などの皮膚感覚を持ちえません。
だって自分のお金をかけていないんですもの。
感情を持ったトレーダーが暴落でどう動くか?分かるのは自分で取引しているヒトだけでしょう。
今こそ時代を知るベテランの声に、真摯に耳を傾けるべきだと思います。
まとめ
東日本大震災の津波で生き残ったのは「津波てんでんこ」に従ったヒトたちでした。
彼らは、いにしえの教えを受け継ぎ、常に避難訓練を怠らず、地震の時に素早く動いて助かったのです。
未曾有の金融危機が来ると思います。医者も津波にのまれます。
普段は「老害」と揶揄されますが、
100年に一度の災害で生き残るには、ベテランの教えに耳を傾ける必要があります。
もちろん時代も違うため、彼らの主張全てが正しいわけではない。
だからこそ財政破綻時にどうするか、常に考え、いまから備えるのです。
暴落の後には、素晴らしい「買い場」が待っています。そこで素早く動くのです。
え、不謹慎ですって?不謹慎なのはバブルに踊っている機関投資家と、それを後押ししている中央銀行、そして政府です。
澤上さんも、あとがきでこう書いています。
どのバブルも崩壊するんや、経済や社会は大混乱に陥る。バブルに踊っていたひとたちはどうあれ、その後始末はいつも国民に降りかかってくるのだ。
それが金融の時代とやらの行き着くところなのか。いくら憤り、無責任すぎると怒ったところで、ラチが明かない。
そういうことなら、われわれ一般生活者は、自助の対策を講じるに如かず。