臨床

患者コミュニケーションの3つのコツ

患者コミュニケーションの3つのコツ
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こんにちは。山のクマです。

患者さんとのコミュニケーションは、難しいモノです。ちょっとした物言いで、印象が良くも悪くもなってしまいます。

今回は、開業医ならではの患者コミュニケーションについて、考えます。

鍵は「信頼関係=ラポール」。でも、難しくありません。3つの事に気を付けるだけです。

それは「笑顔」「患者ニーズに対応する」「医者自身のケア」

この中で最も大切なのは、医者自身の心と身体の健康です

笑顔

人間は、コトバ以外のコミュニケーション(ノンバーバル・コミュニケーション)が約9割と言われています。

その中でも最も重要なのが笑顔です。「自然な」笑顔で対応することで、患者さんとのラポール形成がスムースに進みます。

患者のニーズに対応する

開業医は特に、患者さんのニーズに敏感になる必要があります。満足を得られないと、患者さんは別の医療機関を受診します。

どのように患者さんのニーズに対応しましょう?いくつかのテクニックがあります。

オウム返し

患者「昨日から、なんかこう、おなかの下の方がキリキリして・・・」
医者「あー、昨日からおなかの下の方がキリキリと痛いのですね」
患者「そうなんです」

オウム返ししただけなのですが、患者さんとの信頼関係は増して行きます。「自分の事をわかってくれる」と思うようです。

患者さんの訴えをコトバにする

患者「いやー、なんか、なんて言ったら良いんだろう、胸のあたりが、ぐーっと来るって言うか・・・」
医者「酸っぱいモノが上がってくる感じですか?」
患者「そうなんです!」

自分の感覚をコトバで表現するのは、結構難しいモノです。そんなとき、医者がコトバを提案することで、患者さんは表現することができ、安心します

精神分析家ラカンの理論を使うと、「現実界」を「象徴界」に落とし込むことで、嫌な感じが減弱します。

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コトバの提案には、問診票を参考にします。ただ、問診票と同じ事を繰り返し聞いてしまうと、患者さんはイライラしますので、注意です。

身内の病気

患者「実は父親が胃癌だったので・・・」
医者「そうでしたか。じゃあ、胃カメラやってみますか?」

患者さんの症状が身内の病気に似ている場合、検査にすんなり同意してくれることが多いです。

何が心配か直接聞く

医者「みぞおちの痛みですね。ご自身は、どんな病気が心配ですか?」
患者「ネットで心筋梗塞が出てきて、それが心配で・・・」
医者「(おいおい、18歳の女性で心筋梗塞はないだろ・・・)」

こちらがびっくりするような鑑別診断を挙げてくるヒトがいます。ネットに順応した若年者に多いですね。

最終的には本人に聞くのが間違いないです

なお、ネットの情報はむやみに否定するとラポールは一気に壊れるため、違和感があっても関連する検査はやっておいた方が良いです。

検査希望か、処方希望か

医者「今の状態なら、胃薬で様子を見るという手もありますし、心配なら胃カメラを予約しても良いと思います」
患者「少し胃薬で様子を見ます」

患者さんは最初から、どうしたいかを決めていることが多いです。それを上手く引き出すと、印象が良くなります。

あまり難しいことを考えず、聞いてみるのが一番。

わからなくとも考えられる疾患・病態を説明する

医者「まだはっきりわからないのですが、胃が荒れているか、胃の動きが強すぎて、痛みが出ているようです」

初診だと、確定診断に結びつくことはほとんどありません。それでも医者の頭にある鑑別診断を話すことで、患者さんは安心します。

病名や説明が付かないことが、患者さんにとって最もストレスです

家族の相談にも乗る

患者「ところでウチの母親のことなのですが・・・」
医者「どうしました?」
患者「数年前から物忘れがひどくなって、認知症かと思っているのですが・・」
医者「ああ、それは心配ですね。認知症はなかなか自分から病院に行こうとしないので、一度『一通り調べてもらいに病院に行こうよ』と連れてきてみてはどうですか?『頭の検査』として簡単な認知症の検査も出来ますよ」

家族の相談をしてくるのは、既にラポールが出来ている証拠です。しっかり対応することで、患者さんが患者さんを連れてきてくれます

ドアノブ・クエスチョンに丁寧に対応する

患者「あ、先生、実は背中も痛くなる事あるんですけど、胃とは関係ないですよね」
医者「うーむ(膵癌も見ておいた方が良いかも)。胃カメラと一緒に腹部エコーもやってみましょうか」

患者さんは診察室を出ようとドアに手を掛けたとき、重要なことを話します。ドアノブ・クエスチョンです。最後まで気を抜かない事が、ポイントです。

医者自身をケアする

自然な笑顔で患者さんの訴えに的確に対応することは、とても心身の体力が必要です。

つまり、医者の心と身体の状態が、患者さんとのコミュニケーションに最も影響します

仕事で疲弊しないように、しっかり休息を取り、たまには旅行などでリフレッシュする事が、一番大切です。

まとめ

以上、患者さんとのコミュニケーションのコツを挙げてきました。

上手にコミュニケーションを取ることで、患者さんは安心して帰って行きます。これは治療の一環です

もう死語ですが、ムンテラ(ムンはムントの略で「口」,テラはテラピーの略で「治療」)というコトバが、思い浮かびます。

自分の体調を整え、一期一会で対応したいものです。

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