- 金価格の急騰は「通貨への信頼低下」を示す指標──2025年に3,800ドル突破、ドル信用不安が主因。
- 歴史的にも金が上昇する局面は共通──通貨増刷・地政学リスク・インフレ・ドル信用低下の4要因。
- ニクソンショック~オイルショック~リーマン~コロナ──いずれも「紙幣の価値」が揺らいだ瞬間に金は上昇。
- 2025年の金高騰は構造的問題の表れ──米国債の膨張とドル体制への不信が背景。
- 医師・専門職こそ資産防衛を意識──「価格が上がってから買う」のではなく「信頼が崩れる前に持つ」。
- 2025年の金価格が示す「世界経済の異変」──急騰の背景と資産防衛のヒント
- ニクソンショックとは何だったのか──金とドルの決別がもたらした歴史的転換点
- 第一次オイルショックと金価格の関係──インフレとスタグフレーションが示した現実
- 第二次オイルショックで金が“恐怖指数”に──地政学リスクと価格急騰のメカニズム
- リーマンショックと金価格の動き──通貨増刷が生んだ“安全資産”への資金シフト
- コロナショックで見えた「通貨の脆さ」──マネー供給と金価格の相関を読み解く
- 2025年の金価格急騰は何を意味するのか──ドル信用不安と“実物資産”への資金流入
- まとめ:2025年の金価格上昇は「ドル信用危機」の警鐘──医師が取るべき資産戦略とは
2025年の金価格が示す「世界経済の異変」──急騰の背景と資産防衛のヒント
2025年に入り、金価格がまさに“異常値”とも言える水準まで上昇しています。
年初に2,000ドルだった金は、わずか数か月で3,900ドルを突破。
この動きは、単なる投資商品の値動きを超えた、グローバル経済の本質的な変化を映し出しています。
特に医師として日々の診療に集中されている方にとって、資産運用やマクロ経済はどうしても後回しになりがちです。
しかし、私たちの資産を蝕むリスクは、病気と同じく「気づかぬうちに進行する」のが現実です。
本記事では、戦後から続く金価格の歴史的急騰のタイミングを振り返りながら、「なぜ今、金が買われているのか?」を紐解いていきます。
そして最後に、現在の上昇局面をどう捉え、医師としてどのような資産戦略を描くべきかについて考察します。
金価格は世界の“通貨への信頼”を映すバロメーター。
今こそ、金の声に耳を傾けるタイミングかもしれません。
ニクソンショックとは何だったのか──金とドルの決別がもたらした歴史的転換点
1971年、アメリカのニクソン大統領が突如として「金とドルの交換停止」を宣言。これが、後に“ニクソンショック”と呼ばれる歴史的転換点です。
それまで、金1オンス=35ドルという固定相場制が続いていましたが、この出来事をきっかけに金は「モノサシ」から「投資対象」へと変貌を遂げます。
翌年には60ドル、1973年には100ドルへと倍々ゲームで上昇。背景にあるのは、ドルの信用崩壊。
医師の皆さんにとって、これは「医学界でエビデンスレベルが急に信用できなくなった」ようなインパクトといえば伝わるでしょうか。
加えて、1973年には第一次オイルショックが起き、インフレの嵐が吹き荒れます。
金は「実物資産」としての強さを見せつけ、さらに価格は加速的に高騰していきます。
第一次オイルショックと金価格の関係──インフレとスタグフレーションが示した現実
1973年、原油価格が数か月で約4倍に跳ね上がった第一次オイルショック。産油国による輸出制限が引き金となり、世界中がパニックに陥りました。
日本を含む多くの国でインフレと不況が同時に進行し、「スタグフレーション」という厄介な経済現象が現実のものとなります。
この時期、金はまさに“インフレヘッジ”としての本領を発揮しました。1オンス100ドルだった価格は、1974年末には180ドル付近へと上昇しました。
第二次オイルショックで金が“恐怖指数”に──地政学リスクと価格急騰のメカニズム
1979年、世界は再び原油ショックの波にのみ込まれました。第二次オイルショックの到来です。
中東情勢の緊迫化を背景に、原油価格はおよそ3倍に跳ね上がり、世界中が再びインフレの悪夢に襲われます。
このタイミングで、金価格も爆発的に上昇。1979年には1オンス200ドルだったものが、年末には400ドルを突破。1980年の年明けには一気に850ドル前後に達します。
金がまるで“恐怖指数”のように反応した瞬間でした。
原因は、地政学的リスクとインフレ懸念。特に、イラン革命やソ連のアフガニスタン侵攻といった国際情勢が、投資家心理に火をつけました。
しかし、その後インフレが落ち着き、金価格は200〜300ドルで長らく安定。
まるで急性期を過ぎた患者が慢性期に移行したかのように、金もまた“通常モード”へと戻っていきました。
リーマンショックと金価格の動き──通貨増刷が生んだ“安全資産”への資金シフト
2008年、世界を震撼させたリーマンショック。米投資銀行リーマン・ブラザーズの破綻は、まさに“金融版の心停止”でした。
市場はパニック、信用は収縮、株価は暴落。FRB(米連邦準備制度)は即座にドルを大量供給し、市場への“蘇生”を試みました。
2008年初頭800ドル前後だった金価格は、金融危機の予兆を察知したのか一時1,000ドルに上昇していましたが、リーマンショックで700ドル台に下落。
これは機関投資家が手持ちのキャッシュを確保しようと、金売りに走った結果でした。
しかし、その後の欧州債務危機や量的緩和の影響で、金は再び脚光を浴び、2011年には1,920ドルという当時の史上最高値を記録します。
ここでのキーワードは「ドル増刷」。通貨の希薄化=価値の低下に対する防衛策として、金が改めて評価されたのです。
コロナショックで見えた「通貨の脆さ」──マネー供給と金価格の相関を読み解く
2020年、世界がウイルスに膝をついた――それがコロナショックです。
パンデミックにより、各国はロックダウン、移動制限、経済活動の停止という未曽有の事態に直面。
医療現場が戦場と化す中、各国中央銀行は「量的緩和」という名の大量マネー供給に踏み切りました。
この非常事態下、金は手持ち資金確保のため売られ、一時1オンス=1,450ドルまで下落するものの、すぐに反発し、2020年後半には2,070ドルという当時の最高値を記録します。
背景には「通貨の信認低下」があります。ドルもユーロも円も、一斉に刷られ続けた中で、「何が安全資産なのか?」という問いに市場が出した答えが“金”だったわけです。
2025年の金価格急騰は何を意味するのか──ドル信用不安と“実物資産”への資金流入
そして2025年。金価格は再び激しく動き出しています。
年初には1オンス=2,000ドルだった価格が、現在ではなんと3,900ドルを突破。まるで第二次オイルショック時の急騰を彷彿とさせるスピード感で上昇を続けています。
最大の原因とされるのは、米国の「借金体質」。
コロナ後の財政支出、ウクライナや中東への軍事支援、景気対策――そのすべてを米国債の大量発行でまかなってきた結果、「ドルって本当に大丈夫?」という不安が世界中で高まりつつあるのです。
市場は今、「通貨」ではなく「実物」への信頼を強めています。
金の爆発的な上昇は、“通貨の信頼危機”というより”米国の信用危機”という深い問題の表れです。
忙しい医師の皆さんにこそ、この背景を知っておいていただきたい。なぜなら、金は“価格が上がってから買う”ものではなく、“信認が揺らぐ前に持っておく”ものだからです。
まとめ:2025年の金価格上昇は「ドル信用危機」の警鐘──医師が取るべき資産戦略とは
これまで見てきた通り、金価格が急騰するときには、いくつかの「お決まりのトリガー」があります。歴史的に振り返っても、それは以下の4つに大別できます。
- 通貨増刷
- 地政学的不安定化
- インフレ
- ドルの信用不安
そして今回の2025年の金価格急上昇、その主因は間違いなく「ドル信用不安」です。これは1971年のニクソンショックに非常によく似た構造です。
当時はドルと金の交換停止によりドルの価値が揺らぎましたが、最終的には米国経済の強さに支えられて信用が回復。しかし今回は状況が異なります。
アメリカの国家債務は膨張を続け、利払いだけでも財政を圧迫。加えて、保護主義的な関税政策が続き、経済の先行きには不透明感が漂っています。
さらに、ウクライナ戦争の際にロシアを国際送金システムSWIFTから締め出したことも、各国に「ドルの外に逃げ道を作る」動きを促し、結果としてドルの国際的信用低下を加速させました。
これらを総合的に見れば、金価格の上昇は一時的なバブルではなく、ドル基軸通貨体制の構造的な問題を反映した“シグナル”であると捉えるべきでしょう。
もちろん、市場は一方向には動きません。株価が下落局面に入れば、機関投資家による“現金化”の流れで金が売られ、一時的に調整する可能性はあります。
しかし、そのような下落はこれまでと同様、「押し目」に過ぎないと見るのが妥当です。
医師として本業に集中しつつも、資産防衛という観点から歴史の教訓を活かすならば、「金」は今まさにポートフォリオの中で再注目すべき存在と言えるでしょう。





