コロナ禍以降、ロシア・ウクライナ戦争やイスラエル・ハマス紛争の激化、進行するインフレ、さらには各国の政治体制の変化など、次々と驚くような出来事が世界を揺るがしています。
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このような状況下で、漠然と「従来の手法では資産を守りきれないのでは」と感じていましたが、
ピクテが配信している動画を見て、その思いは確信へと変わりました。
多くの医師が今、投資で意識すべきは「インフレ=通貨価値の下落」です。
これまで主流とされてきた投資戦略を、再検討する必要があります。
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まずは、現在一般的に採用されている投資戦略を整理し、時代の変化に対応したドクター向けアプローチを考えていきましょう。
今回のブログは長文となります。
現在人気の投資法
現在、新NISA枠で人気を集めている銘柄といえば、オール・カントリー(通称オルカン)、S&P500インデックスファンド、NASDAQインデックスファンドです。
オルカンは全世界に分散投資できる銘柄として知られていますが、その実態は米国株が約60%を占める構成比となっており、事実上「米国株人気」の延長線上にあると言えます。
なぜ、これほど米国株が投資家に支持されているのでしょうか?
その理由は2008年のリーマン・ショック以降、右肩上がりを続けてきたからです。
新NISAの投資枠でこれらの銘柄を保有しているドクターも多いでしょう。
しかし、米国株は、なぜ長期間にわたり上昇を続けてきたのでしょうか?
その答えの一端は「通貨の増刷」にあります。
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通貨供給量増加の背景と経緯を紐解いてみましょう。
リーマン・ショック
以下のグラフはドルの発行量を示しています。
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2008年のリーマン・ショック以降、大量の通貨が新たに供給されています。
リーマン・ショックでは、不良債権の処理のため、FRB(米連邦準備制度)は大量の通貨を市場に供給しました。
このタイミングを境に、米国の株価は劇的な上昇を見せ始めます。
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大量のマネーが株式市場に流れ込んだためです。
金融市場が落ち着くと、FRBは過剰な通貨を徐々に回収していました。
しかし、2020年にコロナ・ショックが発生します。
コロナ・ショック
コロナ・ショックは、多くの医師投資家も覚えているでしょう。
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診療現場も大混乱に陥りましたが、市民生活も同じです。
経済活動が急停止したため、各国の中央銀行は再び膨大な通貨を増刷することで、経済を回そうと試みました。
その結果、経済は再び動き出しましたが、株価だけでなく、物価も大きく上昇することに。
これが現在進行中のインフレの要因です。
インフレとは、通貨の価値が下落し、購買力が低下する現象を指します。
たとえば、2019年に50万円で購入できたロレックスは、今では90万円必要になっています。
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物価上昇の背後には、通貨の増刷が大きく関わっているのです。
現在のインフレを抑えるため、FRBは金利を急上昇させていますが、
多くの医師投資家にとって初めて直面する環境です。
この先を見据えるためにも歴史を振り返り、現在の金融状況との比較を行うことが重要です。
医師も知るべきインフレ率と金利の歴史
以下のグラフは、1962年以降のインフレ率と金利の推移を示したものです。
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1960~70年代には物価と金利が同時に上昇し、通貨価値が下がり続けたことが分かります。
インフレ率は1980年をピークに低下し、金利も続いて下降していきました。
しかし、コロナ・ショックを契機に、再び物価と金利が上昇し始めています。
今の投資環境は、まさに1960~70年代の状況とよく似ています。
当時、例えば大衆車であるカローラの価格は徐々に上昇しており、1台の車を購入するために、より多くのお金が必要となる時代でした。
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インフレと高金利の時代を知る投資家の多くは引退しており、未だに現役なのは「さわかみファンド」の澤上篤人氏のような限られた人物だけです。
現在、長期間続いた「金利低下時代」に確立された投資戦略が通用しないフェーズに入っています。
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医師向けインフレ時代の投資戦略
大きな変化に直面する中で、私たちドクターはどのような投資戦略を採るべきなのでしょうか?
ポイントは以下の3つに集約されます:
1)インフレに強い株を持つ
2)実物資産を持つ
3)米国一極集中投資を避ける
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1)インフレに強い株を持つ
インフレに強い株とは、いわゆる「資産株」と呼ばれる銘柄群です。。
インフレ環境下でも価格を上手く転嫁でき、業績が安定しているうえに、配当利回りが高い点が特徴です
具体的には、公共事業・インフラ関連、不動産関連、生活必需品セクター、医薬品・ヘルスケア、金融関連、資源・エネルギー等の分野で、上記の条件を満たすモノが良いかもしれません。
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ただし、これらの銘柄に投資する際には注意が必要です。
インフレに強いとはいえ、後述するように株式市場全体が急落する可能性があります。
長期的な視点と慎重な銘柄選定が重要となるでしょう。
2)実物資産を持つ
インフレ時代に不動産や金などの実物資産が良い理由は、法定通貨と異なり簡単に増やすことができないためです。
この希少性のため、実物資産はインフレ時に価値が上昇する傾向があります。
医師と好相性の不動産投資
ドクターは社会的信用も高く、不動産投資は人気です。
たとえば自由気ままな整形外科さんは大規模な借り入れを行い、投資用不動産を購入しています。
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不動産投資に必須の借り入れは、インフレ時代に最強の武器となります。
しかも融資の多くが固定金利であることは、彼の信用力の高さを物語ると同時に、金利上昇にも強い戦略を取っている好例と言えるでしょう。
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忙しいドクターにぴったりの金投資
ゴールドも実物資産として注目されています。
純金積立では小額から、地道に投資することが可能です。
実際、円建ての金価格はうなぎ登りであり、通貨の購買力低下に対する有効なヘッジとなっています。
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金投資は「買って持つだけ」なので、忙しいドクターにぴったりです。
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最近ではビットコインも「簡単に増やすことができない」特性を持つため、高騰しています。
真の意味で実物資産とは言いにくいですが、オルタナティブ資産として少し保有しておくことで、
ポートフォリオにスパイスを加える存在として活用するのも面白いでしょう。
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3)米国一極集中投資を避ける
現在、米国株投資は依然として人気を集めています。
しかし、今後の投資環境を考えると、米国一極集中の投資には注意が必要です。
その理由は2つあります。財政赤字問題と米国株の割高感です。
財政赤字問題
米国の国債発行額は、対GDP比でG7諸国の中で3位に位置しています(1位は日本、2位はイタリア)。
ただし、日本とイタリアは経常収支が黒字であるのに対し、米国は2000年以降ずっと経常収支が赤字で、しかも赤字幅は拡大を続けています。
コロナ禍で増加した国債発行額に加え、利払い額も増加しており、まさに「自転車操業」の状態に近いといえます。
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米国株の割高感
S&P500のPER(株価収益率)は現在約29倍で、1985年以降の平均である15倍を大幅に上回っています。
特にAIブームによりNVIDIA、アップル、マイクロソフト、メタ・プラットフォームズ(旧フェイスブック)、アマゾンなどの少数のテクノロジー企業が市場全体を押し上げており、いびつな構造が顕著です。
割高感が意識されたのは2025年1月28日の「DeepSeekショック」です。
中国の新興企業DeepSeekが開発した低コストAIの出現により、ハイテク株の割高感を正当化するのが難しくなるとの懸念が広がった結果、NASDAQが急落しました。
今後さらなる暴落の可能性を示唆する出来事として、注目されます。
米国以外の地域や資産の分散を意識することが、これからの投資で重要となるでしょう。
まとめ:医師も副収入を考えよう
2013年のアベノミクス以降インフレを心配してきましたが、ついに現実のものとなってしまいました。
通貨価値下落の時代となり、貯金だけでは資産保全が出来なくなっています。
かつては、医者は節約だけで富裕層を目指せました。
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しかし、現在その方法は通用しないでしょう。
多くの医師の給与は保険診療によって支払われていますが、少子高齢化が進む日本では医療費抑制の圧力が強く、賃金の大幅な上昇は期待できません。
また、働き方改革による労働時間の制約で、給与引き下げの可能性すら見えてきています。
インフレが進む中、医師の実質賃金は既に低下しつつあり、対応策を講じる必要があります。
節約だけでは限界がある以上、副業や投資を通じた副収入の確保が、ドクターにとって生活防衛・資産防衛の鍵となるでしょう。
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今回のブログでは、医師がインフレ時代を生き抜くための基本的な投資戦略や考え方について述べてきました。
この内容が、多忙な医師の皆さまにとって少しでもお役に立てれば幸いです。
未来に備えるためにも、今からできる一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
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