- 2025年9月〜12月、金ETF「金の果実」(1540)の市場価格が実際の金価格を大きく上回る「乖離(プレミアム)」が発生した
- 原因は、買い注文の急増に対して現物の金地金調達が追いつかなかった「現物国内保管型」特有の供給不足
- 金ETFは「ペーパーゴールド」であり、市場混乱時には金地金と価格が一致しないリスクがある
- 金ETFと金地金は別のアセットクラスとして管理することが、医師投資家の資産防衛において重要な視点となる
はじめに|医師投資家に人気の金ETFで何が起きたのか?
医師投資家の中で、金投資といえば金ETFが人気です。しかし2025年後半、その金ETFで非常に興味深い現象が起きました。
純金上場信託(現物国内保管型)、通称「金の果実」(証券コード:1540)の市場価格が、実際の金の価値を大きく上回って急騰したのです。
この点については、一般社団法人日本貴金属マーケット協会(JBMA)代表理事の池水雄一氏が、YouTube『ウィークリーゴールド』で詳しく解説しています。今回はその内容をシェアします。
動画はこちら:https://www.youtube.com/watch?v=bZwewaRcGPg&t=5s
1. 金ETFと金価格の「乖離(プレミアム)」とは何か?
基準価額と市場価格のズレが生じた
金ETFには「基準価額」という本来の価値があります。これはETFが保有する金現物などの純資産総額を発行済口数で割った、1口あたりの正当な価値——いわばETFの「真の値段」です。通常、市場で売買されるETFの価格(市場価格)はこの基準価額とほぼ一致しています。
ところが2025年9月〜12月にかけて、1540の市場価格が基準価額を大きく上回るという異常事態が発生しました。この「市場価格が本来の価値を超えた状態」を乖離、またはプレミアムと呼びます。
時系列で見る乖離の経緯(2025年9月〜2026年1月)
- 2025年9月11日ごろ〜:市場価格が基準価額を上回る傾向が顕著になり始めた
- 2025年10〜11月:金価格の歴史的な高騰に伴い、個人投資家の買いが急増。乖離率が数パーセント以上に拡大
- この時期:東証や管理会社(三菱UFJ信託銀行)が投資家への注意喚起を行う事態に
- 2025年12月末〜2026年1月:乖離は徐々に収束
「金が値上がりしている!今すぐ買わなければ!」と多くの個人投資家が1540に殺到した結果、ETFの価格が金の本来の価値よりも高くなってしまったのです。
2. なぜ乖離が起きたのか?現物保管型金ETFの仕組みを解説
この現象の背景を理解するには、1540という商品の仕組みを知る必要があります。「金の果実」は、日本国内に実際の金地金(ゴールドバー)を保管するタイプのETFです。
金ETFの購入増加=金地金の調達が必要になる
投資家がETFを大量に買うと、発行元はその分の金地金を追加で調達しなければなりません。ところが、ゴールドバーの精製・調達には相当な時間がかかります。
2025年当時、急激な金価格の上昇を受けて、1540への買い注文が殺到しました。しかし国内精錬所の処理能力には限界があり、海外からの輸送にも時間的なラグが生じます。
「ETFへの需要は爆発的に増えているのに、裏付けとなる金地金の調達が追いつかない」——こうした供給不足から、市場価格だけが先行して上昇してしまったのです。
人気ラーメン店の食券(ETF)を想像してください。ラーメン(金地金)の人気が高まり、食券を求める行列ができました。しかし厨房(精錬所)の処理能力には限界があります。すると「この食券、高く買わない?」と既に食券を持っている人が現れ、どうしても早く食べたい客はプレミアム付きで買い取る——。その結果、食券の価格(市場価格)が実際のラーメン代(基準価額)を上回る異常事態が起きる。これが今回の乖離と同じ構造です。
3. 医師・投資初心者が金ETF投資で学ぶべき3つの教訓
教訓①「ペーパーゴールド」はあくまで金融商品である
金ETFは手軽に売買でき、少額から始められる便利な投資手段です。しかし今回の現象は、ETFが「ペーパーゴールド(紙の金)」に過ぎないことを改めて示しました。市場が極端に混乱したとき、金融商品の価格と実際の金の価値が大きく乖離することがあります。
教訓②金ETFと金地金は別のアセットクラスとして管理する
金ETFと実際の金地金(コイン・バー等)は、同じ「金への投資」のように見えて、性質が異なる資産です。金地金は価格の歪みに左右されず、現物として手元に置くことができます。資産防衛の観点から金を保有するなら、金ETFと金地金をそれぞれ別のアセットクラスとして意識し、使い分けることが重要です。
教訓③相場の過熱時に冷静な判断ができるか
今回、東証や管理会社から「プレミアムが乗っている状態での購入はお控えください」という注意喚起が出されました。多忙な医師だからこそ、こうした情報をタイムリーにキャッチし、冷静に判断できるかどうかが投資における重要なスキルといえます。
まとめ|金投資を始める医師投資家へ
- 金ETFは便利な金融商品だが、「金そのもの」とは異なる
- 市場が混乱すると、ETFの価格が金の実態価値と大きく乖離することがある
- 金ETFと金地金を別のアセットクラスとして意識し、バランスよく保有することが重要
- 資産防衛を本気で考えるなら、現物金の保有も選択肢に入れよう
今回の出来事は、金投資を考えている医師投資家にとって格好の学習機会です。利便性の高い金ETFを活用しながら、その特性とリスクをしっかり理解した上で資産形成を進めていただければと思います。
今回解説してくれた池水雄一氏の著書



