- 2025年第三四半期、金の世界需要は過去最高の1,313トンを記録
- 投資需要が急増し、特に金ETFは前年比134%増と著しい伸び
- 金供給も過去最高を更新、鉱山生産とリサイクル金が堅調
- 今後はドル不信と地政学リスクを背景に投資需要が継続見込み
- 日本では金価格が1gあたり2万円を突破し、地金需要が急増
- 金投資の手段はETF、地金、ジュエリーなど多様化が進む
- 通貨価値の下落を背景に、金価格の上昇トレンドは今後も継続の可能性
- 医師にとって、金は“現金では守れない資産”を防衛する手段となる
2025年第三四半期の金需要動向:医師が押さえるべき注目ポイント
2025年第三四半期のWorld Gold Councilによるレポートが出ました。
金の世界需要は1,313トンに達し、過去最高を記録しました。
これは単なる数字の話ではなく、「安全資産」としての金が、再び世界の注目を集めていることを示しています。
特に投資需要の増加が全体を牽引しており、金ETF(上場投資信託)への資金流入が大きな追い風となりました。
一方で、金価格の高騰は宝飾品需要にブレーキをかけており、消費の二極化が見て取れます。
宝飾品
宝飾品としての金の需要は、前年同期比で19%の減少と大きく落ち込みました。
特に、世界の消費を支えるインドと中国がそれぞれ31%、18%のマイナスを記録。
価格の高止まりが主な要因ですが、その背景には各国固有の事情も見え隠れします。
インドでは豊作に支えられて婚礼需要が底堅く推移する一方、中国では経済成長の鈍化が影を落としています。
医師としては、これらのマクロ経済の動きが“実需”にどう影響するかを押さえておくことが、より戦略的な資産防衛につながるでしょう。
投資
注目すべきは、投資需要の47%という大幅な伸びです。
地金や金貨といった実物資産も安定した需要(+17%)を示しましたが、特筆すべきはETF。
なんと前年同期比で134%増という驚異的な成長を遂げました。
特に欧州と米国での動きが顕著で、地政学的リスクの高まりがリスクオフの動きを加速させた形です。
「もし何かあったときにどう守るか?」という問いに対し、多くの投資家が“金”を選び始めているということ。
これは、分散投資を考える上で見逃せない潮流です。
中央銀行
中央銀行もまた、金購入の動きを強めています。
前年同期比では+10%と堅調で、特にポーランドと中国が存在感を示しました。
ただし、金価格の高騰により、年初来の累積購入量は前年をやや下回っています。
とはいえ、金を通貨防衛や国際的な信用の裏付けとして活用する動きが続いており、これは「国家レベルのリスクヘッジ」とも言えます。
個人投資家としても、この視点は無視できません。
テクノロジー
金の工業用途、特に電子部品や医療機器などに使われる需要は、前年同期比でわずかに2%減少しました。
AI関連分野では引き続き堅調な動きがあるものの、関税政策による不確実性が影響を与えていると見られます。
今後の技術革新によってこのセグメントがどう動くかは、金市場全体の底支え要因として注目すべきポイントです。
過去最高を記録した金供給の背景とは?医師のための市場分析
金の供給も、需要と並んで堅調な動きを見せています。
2025年第三四半期における供給量は、前年同期比で3%増加し、四半期ベースで過去最高を記録しました。
金は「限られた資源」と言われがちですが、現実には新規採掘とリサイクルのバランスによって供給が支えられており、そのダイナミクスを理解することは、今後の価格動向を読む上で欠かせません。
鉱山生産
鉱山からの金供給は前年同期比+2%と、地味ながらも安定した伸びを見せています。
ただし、これは単純な増産ではなく、増産鉱山と減産・閉山鉱山の綱引きの結果。
つまり、全体としての数字は好調に見えても、供給の安定性には常にリスクが付きまといます。
鉱山事故、政変、規制強化といった突発的な要因が生産に与える影響は無視できません。
医師の皆さんにとっては、こうした地政学リスクや供給不安が金価格にどう跳ね返るかを意識することが、投資タイミングの見極めに役立つでしょう。
リサイクル金
リサイクル金は前年同期比で+6%と健闘。ただし、ここに一つ興味深い現象があります。
今回の価格上昇幅を考慮すれば、もっと大きな売却が起きても不思議ではありません。
ところが現実には、多くの保有者が“まだ売らない”。
これは、さらなる価格上昇を見込んで様子見しているか、あるいは金を売却せずに担保にして融資を受けるという新しい活用法が浸透しつつあるためです。
このように金は、単なる「売る・買う」だけではなく、「持ち続ける」「活用する」といった多層的な資産戦略の一部となってきています。
金に対する市場参加者の姿勢が変わってきていることは、今後の価格変動の振れ幅やボラティリティの大きさを考える上でも、重要な視点となるでしょう。
今後の金需要はどう動く?投資家・医師が注目すべき未来予測
ここからは、WGC(World Gold Council)のデータに加え、私自身の視点も交えて今後の金需要を展望していきます。
医師という忙しい職業のなかでも、資産防衛やリスク分散に真剣に取り組む方々にとって、「金」は今、ますます見逃せない存在となっています。
宝飾品
まず前提として、金の需要は金価格の変動に非常に敏感です。
価格が上がれば、手に届きにくくなり、特に実需である宝飾品需要は減少していくと見られます。
インドや中国といった需要大国でも、価格高騰が続けば、ジュエリー購入を控える動きが加速する可能性が高いでしょう。
投資
一方で、投資需要は今後も力強さを維持すると考えられます。
これまで金に関心を示してこなかった欧米の機関投資家たちが、ここへきて続々と金ETFに資金を移し始めているのは注目すべき変化です。
背景には、ドルの信認揺らぎや中東・東欧の地政学的リスクなど、“予測不能”な要素が山積しています。
こうした環境では、無国籍でありインフレ耐性を持つ金に資金が向かうのは自然な流れと言えるでしょう。
中央銀行
ドル一極体制への懸念が根強い中、グローバルサウス諸国を中心に、金準備の積み増しを続ける流れは今後も継続する公算が大きいです。
これは国家レベルでの“リスクヘッジ”の動きであり、民間投資家にとってもシグナルとして受け取るべきポイントです。
テクノロジー
最後に、テクノロジー需要について。AI関連の需要は確かに堅調ですが、全体としては景気減速の影響を受けて鈍化する可能性があります。
特に金はスマートフォンや半導体、医療機器など広範な分野で使われているため、各国の製造業の足取りがそのまま需要に反映されます。
日本の金投資事情2025:金価格高騰と個人投資家の変化
日本における金投資のスタイルには、長年ひとつの“お約束”がありました。
すなわち、「金価格が上がれば売り、下がれば買う」という典型的なバーゲンハンティング型の動きです。
価格変動に対して機敏に反応する、いわば“トレーディング型”の投資行動が一般的だったと言えるでしょう。
しかし、2025年10月──この流れに大きな変化が生じました。
金価格が1gあたり2万円を突破するという歴史的な水準に到達したにもかかわらず、売りではなく買いが一気に加速したのです。
特に投資用の金地金やコインへの需要が急増し、結果として50g以下の小型地金が品薄になるという事態が起きています。
これは単なる一時的な「金ブーム」ではなく、日本人投資家の金に対する意識が根本的に変わり始めている兆候だと考えられます。
インフレ、円安、そして世界的な地政学リスク──こうしたマクロ環境を前にして、「下がったら買う」のではなく、「持っておくことでリスクを抑える」ための金保有が、選択肢として定着しつつあるのです。
医師の皆さんにとっても、日々の診療に追われながらも資産を守り、増やす必要がある今、「金を持つことの意味」はこれまで以上に重みを増しています。
価格の高低よりも、“なぜ今、金を持つのか”という視点こそが、今後の資産形成におけるカギになるでしょう。
医師が始める金投資:ETF・地金・ジュエリーの選び方と買い方
金への投資を始めたい──そう考えたとき、まず悩むのが「どう買うか?」という点でしょう。
すでに株式投資を行っている医師であれば、最も手軽で管理もしやすいのが金ETFです。
証券口座からすぐに購入でき、売買のタイミングも柔軟。
なかでも、現物の金に裏付けられたETFを選ぶことで、「仮想」ではなく「実物としての金」をポートフォリオに組み込むことができます。
ただし、今年の10月のように金地金と金ETF価格の乖離が起こることもあり、注意が必要です。
一方で、実物資産への関心がある方や、すでに金ETFをある程度保有している方には、金地金の保有をおすすめします。
地金の魅力は、金融システムの外にある“自己完結型の資産”であること。
金庫に保管する実感、そして「この金塊は自分のものだ」という心理的な安心感は、ETFにはないリアリティがあります。
いずれの方法を選ぶにしても、価格に一喜一憂せず、ドルコスト平均法でコツコツ積み立てていくのが王道です。
2025年10月半ばのような高値掴みを避け、リスクを平準化するうえでも非常に効果的な戦略と言えるでしょう。
これは、日々忙しい診療業務に追われる医師にとって、最も手間がかからず、かつ再現性の高い投資アプローチでもあります。
また、好みに応じてジュエリー型の金、特にキヘイタイプのネックレスやブレスレットを選ぶという選択肢もあります。
こちらは見た目の楽しさもある一方で、工賃が上乗せされるため、投資効率としては割高になる点には注意が必要です。
なぜ今、医師が金投資を考えるべきか?15年の経験から導く結論
金投資を始めて15年以上になりますが、今年2025年の動きは、過去に例を見ないほどの激しさです。
その背景にあるのは、単なる価格の上昇ではなく──法定通貨の「価値下落」という本質的な問題です。
金の新規供給は年1.5%程度と、極めて限られています。
一方で、過去10年間の法定通貨の増刷率を見ると、日本円:年2%、米ドル:年5.5%、ユーロ:年4%。いずれも、金の増加スピードを大きく上回っています。
つまり、通貨の“量”はどんどん増えているのに、金の“量”は増えていない──このギャップこそが、金価格上昇の源泉なのです。
この動きは、Bloombergも「De-basement取引(通貨価値切り下げトレード)」として注目しています。
さらに、G7諸国はいずれも高齢化という構造的課題を抱えており、社会保障費の増大を止める術がない状態。
結果として、法定通貨のさらなる供給=インフレ圧力の増大は避けがたい現実です。
こうした環境下では、金価格の上昇=法定通貨の購買力の低下という構図が、これからも続くと見るべきでしょう。
もはや現金を銀行に預けているだけでは、その価値を保てない時代です。
だからこそ、金を含めた「資産の防衛線」をどう引くか──これは、資産形成ではなく資産のサバイバルの話です。
金だけでなく、不動産やインフラ、AI関連など、今後の時代に即した上昇余地のある資産を適切に選び取っていくことが、今まで以上に重要になっています。
医師として日々の現場を支えるあなたの努力と同じように、あなたの資産にも“未来に耐える構造”を。
それが、これからの投資に求められるスタンスです。
金の第一人者による最新の解説です。



