こんにちは。山のクマです。
最近「バフェットの銘柄選択術」を読みました。
億万長者をめざすバフェットの銘柄選択術→Amazon.co.jp
ウォーレン・バフェットは、将来伸びそうな企業を選んで投資し、大資産家となりました。
手法は独特で、長期にわたって良好な利益を上げることが出来る企業の株を、買います。比較対象は他の株だけではなく、国債も含めた債券も視野に入れています。
こちらの記事のように、コロナショック後のマーケットでは彼の手法が通じなくなっているのではないか、という論調もあります。まあ、彼も今年90歳ですからね。
投資の神様バフェット氏、お得意の危機対処術にほころび:ロイター
しかし50年近く投資を行い、継続して資産を増やしてきた理論は、一度学んでおいて良いのではないかと考えました。
今回(株)ニトリホールディングス(9843:以下ニトリと略します)を、バフェット流に分析してみました。2020年8月時点のデータを使っています。
結論から述べると、ものすごく有望な企業と感じました。
なお、シロウトの分析ですので、いろいろ不備はあると思います。その辺はご勘弁を。
どのように値を算出したかは、「バフェットの銘柄選択術」を参考にしてください。
また、専門用語を調べるときには、こちらが便利です。
定性的企業分析
バフェットは企業を、はじめに定性的に観察し、その後定量的に分析します。
定性的分析として、まず会社四季報を見てみます。
うーむ、この一行を読んだだけで、良い感じです。
消費者独占力
「消費者独占力」ってなんでしょう??英語ではConsumer Monopoly。うーむ。
本の文脈では、Windowsを売っているマイクロソフトや、コークを売っているコカコーラのように、これ無しではいられない、スーパーには必ず置いてある、といった商品やサービスを提供している企業とのことです。
バフェットは「その企業は消費者独占力を持っているか?「はい」なら、7歳の子供でもわかるよう説明せよ」とまず考えたそうです。
インテリア業界で、ニトリはシェア1位です。全国各地にお店があります。
なおシェア2位は良品企画です。『無印良品』ブランドで知られていて、家具などのインテリアの他、衣料、雑貨、食品などを扱っています。
シェア3位はコクヨ。こちらも文具も手がけています。
少し前に大いに話題となった大塚家具は、業績と信用度が著しく低下してしまいました。
ニトリはインテリア専門であり、シェア1位であることより、消費者独占力があると考えました。
事業内容
ニトリはSPA(製造小売り)の業態を取り入れています。世界各国から調達した原材料を、ニトリの品質基準に合った工場(インドネシア、ベトナム)に直送し、製品化しています。現在、商品の90%以上を海外から調達しています。
また2007年5月に恵州物流センター、2009年12月に上海プロセスセンターを稼動させ、商品の輸送について効率化を図っています。
https://www.nitorihd.co.jp/division/business_model.html
生産から販売まで自社で行っているので、利益率を高くとれます。
企業の寿命はどのくらいか
「その企業の製品・サービスは、20年後も陳腐化しないか?」と、バフェットは考えるそうです。
日本は今後人口減少に見舞われるため、家具購入額は減る可能性が高いです。しかし、人間が生まれて成長する以上、家具の新調は常に必要です。
子供が進学や就職すると、一式家具を買いそろえますね。
またニトリは中国、台湾にも進出しています。今後これらの国の国民所得が上昇するにつれ、家具を新調するモチベーションは高まると思いました。
ニトリのお客さんは、日本在住の人だけではなくなってきそうです。
なお、中国では苦戦しているようで、こちらは今後のリスクでしょうね。
ニトリ、32期連続増収増益も 中国事業では出店計画見直し:日本経済新聞
事業は多岐にわたるか
ニトリはインテリア生産販売のみのようです。他社の買収も行っていません。
業務内容はとてもわかりやすい。これは将来をイメージするのにとても有利です。
定量的企業分析
バフェットは定性的企業分析を進めて、消費者独占力を持たず、事業内容が理解できず、長期的に提供サービスが古くなるようなら、そこで分析をやめてしまうそうです。
今までの分析で、ニトリは
・消費者独占力をもち
・事業内容はシンプルで
・10年後、20年後にもサービス内容は古くならないだろう
と思われました。続けて定量的分析に入ります。
1株あたりの利益(EPS)の推移
ニトリの10年分のEPSは、以下の通りです。
2013年に株式分割を行っているので減少していますが、それ以降は生真面目なくらい右肩上がりです。
2013年株式分割後のEPS平均成長率は年率6.91%。うーむ、これはすごい。
株主資本利益率(ROE)の推移
ニトリの10年分のROEは以下の通りです。
こちらは徐々に下がってきています。純利益は確実に毎年増えているのですが、それにもまして内部留保で自己資本が増えているため、ROEは減少してしまいます。
2013年株式分割後は平均で15.6%です。これ、10%以上なら優良企業と言われていますので、十分でしょう。
なおニトリは22の経営指標の目標値を掲げ、その達成に力を入れています。ROE目標値は15%以上となっています。
https://www.nitorihd.co.jp/ir/items/NITORI_FY2019_4Q_Financial_Report2.pdf
有利子負債について
有利子負債(つまり借り入れ)の多い企業は、不況や経営危機の時に乗り越える力が弱く、バフェットはあまり手を伸ばさなかったようです。
ニトリは2020年2月期で、長期借入金は40億円。純利益は714億円ですから、すぐに返せます。実質無借金経営ですね。
自社株買いについて
ニトリは自社株買いを、ほとんど行っていないようです。
インフレ適応力
ニトリの平均価格は、競争相手のナフコ、島忠、大塚などより圧倒的に安いそうです。
2011年と古い資料ですが、これが参考になると思います。
http://koichinakagawa.web.fc2.com/studentessay/f71.pdf
今のシェア2位の良品企画、3位のコクヨに関する資料は、見つからなかったです。
内部留保の活用状態
株式分割をした2013年から2020年までの期間で計算すると、再投資に対するROE増加率は、9.74%となります。つまり内部留保をさらに自社で活用し、利益を8年で1割近く増やしているわけです。
今時日本国債に投資しても0.05~0.06%なので、これは驚異的です。
多額な設備更新が必要か
家具工場は一度建ててしまうと、設備投資は減価償却分、つまり整備費や古くなった機械の入れ替え程度となるため、多額な設備更新は不要と思われます。
こちらの資料をみると、2018年に大きな設備投資をした後は、減少してきています。
https://www.nitorihd.co.jp/ir/performance/investment.html
株価分析
ここまで企業分析を行ってきました。今後ともかなり安定した成長が望めそうな会社だなー、という印象です。
引き続き、株価分析を行います。
現在の株価について
2020年2月の決算時は株価 14,965円で、PER 23.6倍、つまり株価は23.6年分の利益に等しい状態です。
ところが2020年8月現在で、株価は22,000円前後、PERは33倍前後です。
いろいろ見方はあるでしょうけど、日経平均PERは20倍前後ですので、それだけ投資家がニトリを高く評価しているわけです。
https://nikkeiyosoku.com/nikkeiper/
国債利回りとの比較
決算時で株式益回りは4.2%(=1/PER)、8月現在では予想BPS 672円ですので、株式益回り3%です。長期国債は0.05~0.06%なので、比較にすらなりません。
株式を疑似債券と見立てたときの期待収益率
平均ROE 15.6%、平均内部留保率 83.8%とすると、株主資本の予想成長率は13.1%となります。
また2020年2月期の1株あたりの純資産(BPS) は4,984円です。
過去8年はPER 10.6~31.4ですが、保守的にPER 10.6として計算すると、
・10年後の予想BPSは17,055円
・10年後の予想EPSは2,660円
・10年後の予想株価は28,196円
・今後10年間の期待収益率は6.5%
と計算されました。
過去のEPS成長率を元にした期待収益率
直近EPS:635.42です。2013年株式分割以降のデータを採用し、株価は2020年2月期の14,965円を使うと、
・EPS平均成長率 6.91%
・10年後の予想株価は25,527円
・今後10年の期待成長率は5.5%
と計算されました。
まとめ
以上から、ニトリは、今後とも安定して業績を伸ばす可能性が高く、成長率は5.5%~6.5%と見込まれました。
ただし、投資家がこの成長分を全て現金で受け取れるのではなく、ニトリの内部留保分として資産評価される、という事です。
投資家が向こう10年で受け取れる現金は、1株あたり
・配当予想として予想EPS×16%とすると、10年分で1,522円(インカムゲイン)
・10年後の予想株価 25,527円-購入価格(キャピタルゲイン)
となります。
株式投資を行うときには、バフェットはさらに決算書を分析しています。
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今後ニトリの株に投資するときには、さらにこの本を元にして、財務諸表を分析しようと思います。
なお、自分はSBI証券を利用していますが、手数料も安く、幅広い銘柄や投資対象を扱えるため、お勧めです。
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