「このコート、誰が着るんだよ～」
ここはリサイクルショップ。カウンターの奥から聞こえてきた。
買い取り査定をしている店員の声だ。
以前、ブランドモノのコートをリサイクルショップに買い取ってもらった時のことだ。
売りに出したのは、20年前の、仕立ての良いツイードコートだ。買値は15万円。
でも提示された買い取り金額は・・・。
「価値」が暴かれるとき
500円。
「え、まだまだ使えるのに・・・」
愕然とした。
「価値ある」と思っていたモノが、「価値がなかった」。
この瞬間、物欲が激減した。
世の中に出回っている商品のほとんどは、買値より安くしか売れない。
メルカリが盛んな今、多くの人が知っている。
ジモッティーには売値ゼロ円のものも。
ほとんどのヒトが「不要品」を売って「儲かった」と喜んでいる。
おい、良く考えろ。儲かってはいないぞ。
本当に「価値」あるモノは少ない。
でも、それを見極める達人達がいる。
金持ちは「価値」が分かっている
富裕層は「節約」と「投資」が上手だ。
「価値」の下がらないモノを買って節約し、
「価値」の上がるモノに投資する。
一般人は「価値」が見極められないから、資産が増えない。
金持ちはよく知っている。
消費財にはメーカーが幻の「価値」を練り込んでいることを。
そして、
本物の投資財には「価値」が潜んでいることを。
消費財の「価値」とは？
マルクスは、手のかかった商品が「価値」を持つと説いた。
ゼロからの『資本論』
→Amazon.co.jp
しかし現代では「価値」の錬金術が生まれた。
マーケティングだ。
商品はターゲットの「承認欲求を満たす」よう、設計されている。
宣伝媒体は重要な役割を持つ。
そこに込められたメッセージはたった一つ。
「コレを買うとあなたの価値が上がります」
購買意欲を煽る魔術だ。
魅せられて買った後、時間と供に魔法は解け、カボチャの馬車が姿を現す。
夢から覚めて幻滅するが、
また欲しいものが出現する。
永遠に脱出できない無間地獄だ。節約はおぼつかない。
マーケティングを知ることが、壁を越える手立てとなる。
マーケティングの種類
マーケティングは魔法。
呪文は多数ある。が、有限だ。
インフルエンサーを使う
常套手段。著名人はコレで莫大な収入を得ている。
高級腕時計をはめた一流選手。
炭酸水を美味しそうに飲む有名女優。
まあここら辺までは良くある。が、びっくりしたのは、
女性用化粧品のポスターに超有名メジャーリーガー。
メッセージは単純。
「この商品で、あなたもセレブに！」
承認欲求が満たされる。
イメージを植え付ける
CMには各社とも金をかける。
アウトドアメーカーはキャンプ場や山の映像。
スーツケースメーカーは空港。
まあ、分かる。しかしバブルの頃、
あるタバコメーカーは、NYやリゾートのシーンを写していた。
「あなたはこの場所にいることがふさわしい！」
承認欲求が満たされる。
でも喫煙の行く先は、NYでもリゾートでもなく、オペ室かカテ室だと思うんだけどな・・・。
自尊心をくすぐる
プリンセス・マーケティングという言葉を聞いたとき、腰を抜かした。
プリンセス・マーケティング 「女性」の購買意欲をかき立てる7つの大原則
→Amazon.co.jp
「あなたはプリンセス、今の姿は仮のモノ」
「この商品で魔女の呪文は簡単に解けます！」
ダイエット商材や美容商材で頻用される。らしい
多くの女性は深層心理で、こう思っていたのか・・・。
現実を見ず、お手軽な商材に飛びつく女性に疑問に感じていたが、腑に落ちた。
男も同じだ。
「あなたは無双」
承認欲求が満たされる。
物語を紡ぐ
各企業には、ストーリーがある。
商品を買ったあなたは、物語の主人公だ。
例えば、代々創業一族が経営しているメーカーは訴える。
「コレを買えば、あなたの会社も永劫繁栄します」
経営者は飛びつく。
承認欲求が満たされる。
高値を設定する
本来「価値あるモノ」が「高価」なはずが、
「高価」なものが「価値あるモノ」とされてしまう。
「高価な物を持っているあなたは、価値がある」
承認欲求が満たされる。
では、投資財の「価値」とは？
それは目利きのみが知っている「価値」。
消費財の「価値」はメーカーが声高に訴えるが、投資財の「価値」は秘されている。
見えない故、勉強し、経験して初めて分かってくる。
それが投資財の「価値」。
では「価値」あるモノは何か？
価値を産むもの
一等地の不動産、優良株、優良債権など。
土地は地代収入を生む。
優良株は配当を生む。
優良債権は金利がつく。
すべて「価値」を生む商品だ。
ただし、「価値」を産まない土地や株、債権もある。
騙されないように。
価値が毀損しないもの
ゴールド、ダイヤモンドなどだ。
株などと違い、金利は生まない。
しかし、ほとんど変化・変質せず、しかも数が限られる。
「価値」保存機能に優れ、インフレに強い商品だ。
さらに貴金属、宝石は眩いばかりの光を放ち、五感に訴える。
一度手にとって、眺めてみると良い。
「価値」あるものと、一目で腑に落ちる。
多くの人が求めるモノ
骨董品、美術品、ビンテージ品など。
同じモノが手に入らず、人びとを魅了する。
ゴールドなどと同じようにインフレに強い。
その「価値」は見極めがさらに難しく、贋作も出回っている。
目利きのみが本当の「価値」を知ることが出来る世界だ。
「価値」が減弱している資産
円・ドル・ユーロなどの法定通貨だ。
ほとんどのヒトが知らない。
日米欧は量的緩和を実行し、通常の5倍以上のお金を作っている。
その結果、インフレが進行している。
インフレは通貨価値の下落だ。
富裕層は現金保有の比率が低く、ビジネス、金融商品、実物資産などを多く保有している。
インフレの怖さをよく知っているからだ。
日本人は現金保有率が高い。
預貯金しか資産がないドクターは、これから大変な事態になるだろう。
まとめ：「価値」は移ろうモノ
大昔、たまごっちが馬鹿売れした。皆が「価値」を認めたからだ。
しかし大量生産などで「価値」は下落した。
またソフトバンク株は2度暴騰し、暴落している。
「価値」は移ろう。だから難しい。
「価値」は見えない。だから難しい。
「価値」を測るはずの貨幣の「価値」も変動する。だから難しい。
とらえがたい「価値」を見極めることが、成功のコツだ。
