本記事のポイント
- 5年連続の供給不足:2025年までに累積した需給の歪みが、2026年の銀価格暴騰の根源となっている。
- 地上在庫(LBMA)の枯渇:「有るはずの現物がない」という恐怖が、大手ハイテク企業による直接調達を加速させた。
- 実需の変容:需要の約6割が産業用(太陽光・EV・AIインフラ)であり、もはや通貨ではなく「戦略的資源」の性格を強めている。
- 投資判断:中央銀行が保有しにくい(保管コスト高)性質上、ボラティリティは高いが、ポートフォリオの「スパイス」としての妙味は大きい。
- 2026年の銀価格暴騰を徹底分析:金(ゴールド)を超える「銀の時代」が到来した理由
- 最新需給データで見る銀価格の真実:5年連続の供給不足(欠乏)が市場に与える影響
- 2025年夏からの銀価格急騰の背景:LBMA(ロンドン市場)在庫枯渇による流動性危機
- 銀の需要構造が劇的に変化:太陽光・AI・EVインフラに不可欠な「戦略的資源」としての価値」
- 新興国(グローバル・サウス)の銀シフト:インドが銀を融資担保資産に認定した衝撃
- 中央銀行が外貨準備として銀の購入を避ける理由:保管コストと物理的制約の壁
- 2026年以降の銀投資展望:高いボラティリティを活かした医師投資家のポートフォリオ戦略
- 【総括】2026年からの銀投資:供給欠乏リスクに備える医師のための資産配分
2026年の銀価格暴騰を徹底分析:金(ゴールド)を超える「銀の時代」が到来した理由
投資に関心の高いドクターであれば、ここ数か月のマーケットの異様な熱気に気づいているでしょう。2025年半ば、それまでレンジ相場を形成していた銀価格が、突如として「急上昇」を開始しました。
2026年に入ってもその勢いは衰えるどころか、むしろ加速しています。かつては金に連動する『代替資産』と見なされていた銀ですが、今や独自のファンダメンタルズに基づいた強気相場を形成し、多くの医師投資家に衝撃を与えています。
本稿では「なぜ今これほどまでに銀が買われているのか?」その裏側に潜む需給の歪みと、今後の展望を分析していきます。
最新需給データで見る銀価格の真実:5年連続の供給不足(欠乏)が市場に与える影響
銀価格が急上昇した理由、それは「構造的な供給欠乏状態」です。
最新の「World Silver Survey 2025」等のデータを示します。
参照情報:
https://silverinstitute.org/silver-supply-demand/
https://elements.visualcapitalist.com/charted-silver-supply-demand-imbalance-2015-2025/
https://retail.ishifuku-kinzoku.co.jp/journal/silber/post_29.html
2024年・2025年の需給バランス(単位:トン換算)
銀の取引単位であるオンスを、馴染みのある「トン」に換算して整理しました。
| 項目 | 2024年(実績推計) | 2025年(予測) |
|---|---|---|
| 総需要量 | 約36,000トン | 約34,700トン |
| 総供給量 | 約31,400トン | 約31,800トン |
| 市場バランス(不足分) | 約4,600トンの不足 | 約2,900トンの不足 |
※1オンス=31.1g換算。Silver Instituteデータに基づき算出
2021年から続くこの供給不足は5年連続となり、累積の不足量は世界の鉱山生産量の約1年分に迫る勢いです。
需要の微減予測は、価格高騰による一部の需要抑制(スリフティング:Thrifting)を織り込んだものですが、供給側も鉱山の品位低下により劇的な増加は見込めない状況です。
需要が供給を上回った結果、銀価格が上昇したことは理解できると思います。しかし、なぜ5年前ではなく、昨年急に上昇したのでしょう?
2025年夏からの銀価格急騰の背景:LBMA(ロンドン市場)在庫枯渇による流動性危機
2025年夏に銀価格が急騰した最大の要因は、この「不足分」を補ってきた地上在庫の枯渇です。
現物銀は主にロンドンの保管庫(LBMA)で在庫され、必要に応じて出荷されます。
この銀在庫が5年間かけてじわじわ減少し、2025年半ばに歴史的低水準に達しました。その瞬間「有るはずの銀がない」という状況に驚いた市場参加者は、高価格でも銀現物を手に入れようと躍起になりました。
これが銀価格急上昇の大きな要因です。
銀の需要構造が劇的に変化:太陽光・AI・EVインフラに不可欠な「戦略的資源」としての価値」
銀は金と同様、歴史的に「通貨」として使われてきました。
しかしテクノロジーの進化に伴い、通貨としての側面以上に『産業用貴金属』としての戦略的価値が急上昇しています。
銀の需要構造を見てみましょう。
銀需要の約60%を占める産業用実需:太陽光発電とAIインフラによる消費拡大
現在、銀需要の約60%(約21,000トン以上)は産業用です。
- 太陽光発電(PV): 生成AIの普及に伴う電力需要増で、太陽光パネル向けの銀需要は2018年から約2.3倍に膨れ上がりました。
- EV・電子機器: 導電性に優れた銀は、電気自動車やデータセンターのインフラに不可欠です。
大手メーカーが銀鉱山から直接調達を開始:サムスンが主導する現物争奪戦の裏側
現物の逼迫を受け、韓国のサムスンのような大手メーカーが、市場を介さず銀鉱山から直接買い取ろうとする動きを見せています。
これは、銀がもはや単なる投資商品ではなく、企業の生存を左右する「戦略的資源」になったことを意味します。
新興国(グローバル・サウス)の銀シフト:インドが銀を融資担保資産に認定した衝撃
工業用途のみならず、現物資産としての銀にも注目が集まっています。その代表がインドです。
伝統的に「金」を愛するインドですが、供給難と価格高騰を受け、金融機関が銀を融資の担保として認めるようになりました。
2025年、インドの銀輸入額は前年比40%以上増加し、国を挙げての「銀シフト」が鮮明になっています。
まさに「銀」の資産への回帰と言えるでしょう。
このように資源・資産として、銀の地位は上昇しているのですが、金との決定的な違いがあります。それは中央銀行の動向です。
中央銀行が外貨準備として銀の購入を避ける理由:保管コストと物理的制約の壁
歴史的に中央銀行は、金は保有しますが、銀は購入しません。
なぜ中央銀行は外貨準備として銀を積み増さないのでしょうか? そこには極めて「物理的」な理由があります。
銀が金に比べ外貨準備に適さない物理的理由:容積80倍による保管・警備コストの増大
銀は金に比べ、同じ価値を保管するのに約70倍〜80倍の容積を必要とします(金銀比価に基づく)。
中央銀行が保有するような巨額の資金を銀に変えると、広大な倉庫と莫大な警備コストが必要になり、管理効率が著しく悪化するのです。
2025年にはサウジアラビア中央銀行が銀現物や銀ETFを購入したり、ロシア・インドの中央銀行も銀購入を検討するなど変化は見られますが、まだ一部にとどまっています。
産業用途を中心とした銀、今後の展望を次に見てゆきます。
2026年以降の銀投資展望:高いボラティリティを活かした医師投資家のポートフォリオ戦略
銀価格は今後も、産業需要の強さに支えられて上昇する可能性が高いでしょう。
しかし金と異なり、一度相場が崩れると、中央銀行のような安定した買い手が乏しい分、大崩れする可能性があります。
また銀市場は金に比べて規模が小さく、少量の資金流入で価格が乱高下することも見逃せません。
金が「精神安定剤」なら、銀は「劇薬」に近いボラティリティを持っています。
個人投資家としては、銀はあくまで「投資のスパイス」と割り切って保有した方が良いでしょう。
【総括】2026年からの銀投資:供給欠乏リスクに備える医師のための資産配分
本稿では、2026年に起きている銀価格暴騰の背景を深掘りしてきました。最後に、医師投資家が押さえておくべき重要ポイントを整理します。
- 5年連続の供給不足:累積した需給ギャップが、価格を押し上げる強力なファンダメンタルズとなっている。
- 「産業用貴金属」への変貌:太陽光パネルやAIデータセンターなど、次世代インフラに不可欠な戦略物資としての地位を確立。
- 現物資産への回帰:インドなどの新興国が融資担保として銀を認めるなど、資産としての信頼性が向上。
- リスクと対策:中央銀行の買い支えが弱いため、高いボラティリティを前提とした「ポートフォリオのスパイス」としての保有が推奨される。
医薬品の需給逼迫で処方に苦慮するように、銀市場でも『代替の利かない素材の欠乏』が起きています。これは一時的な投機ではなく、構造的なパラダイムシフトと言えるでしょう。
不透明な時代において、データに基づいた冷静な資産配置は、医師自身の生活とキャリアを守る盾となります。この「銀の時代」を、賢明な投資判断の機会として活用してください。
貴金属投資の基本が書かれています。




