「投資をやらないリスクって、ありますよね」
一緒に飲んでいた投資家仲間のセリフだ。
彼は株だけでなく、不動産投資もやっている。
私『えーっと、でも、投資しないと、損しないから、リスクフリーでは?』
彼「もちろん損はしないんですけど、現金だけって将来ヤバい可能性あるんですよ」
『おー、教えてもらっても良いですか?』
投資をするリスク
ほとんどの人にとって、投資リスクとは「損する可能性」だろう。
上がると思って買った株が下がると、痛い。
本当に胃や頭が痛くなり、カラダが苦痛を覚える。
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「投資に慣れている人は、機会損失のリスクも考えています」
『へー、そうなんですか』
「一方投資していない人は、やらなかったときの危険性が見えていないですね」
『例えばどんなリスクがあるんですか?』
投資をしないリスク
代表的なのはインフレリスクだ。
インフレとは「物の値段が上がること」と、多くの人は理解している。
でも商品の立場からみると、逆の世界が見えてくる。
それは「通貨価値の下落」。
同じ商品を手に入れるために、より多くのお金が必要になるのだ。
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「銀行に預けて0.1%の利息が付くとするじゃないですか」
『今じゃその金利でも優良ですね』
「でも昨今のインフレ率は3%程度でしょ」
『そうですね、ガソリンも高いですもんね~』
「銀行預金の利息では、インフレに負けるんですよ」
『なるほど・・・』
「一方借り入れは、自分の場合1%チョットでした」
『え、それってすごく条件良くないですか!』
「利上げ直前でしたから。今はもっと高いですけど、インフレの芽が出たとき、多額の融資を受けて不動産にツッコんだんですよ」
『思い切りましたね~』
「インフレで地価が上昇したらもっと資金が必要になるので、早めに手を打ちました」
『すごいですね』
「でも山のクマ先生も、ゴールド値上がりしてますよね」
『おかげさまで右肩上がりです。MMT、アベノミクス、コロナ危機で世の中にはマネーがあふれましたから』
「政府はドンドン借金するし、日銀はガンガン円を刷るし」
『通貨価値が下がって、株や現物資産が上がりましたよね』
「ホント、資産インフレですわ」
『資産が増えると、多少のインフレは気にならないですよね』
「そうですね。まあ我々は良いんですけど、他のドクターが心配なんですよね・・・」
『私もそう思います』
「投資しているドクターって、どれくらいなんですかね?」
『医者がどれくらいって言うのはわからないんですけど、野村総研のデータでは日本人で投資しているのは2割強でした』
「あ、それ見たことあります。若者が株への投資を増やしているとか」
『医者は一般人より少ない気がします』
「なまじ高収入だから、必要性を感じないのかもしれませんね」
『一般企業は賃上げの方向ですけど、医者の給料って上がるんですかね?』
医者が抱えるリスク
医者の給与は、ほぼ診療報酬費から払われている。
医療費の4割は税金が占めている。
インフレで税収は増えているが、医療費の増加はそれを上回る可能性がある。
高齢化のスピードはすさまじい。政府は医療費抑制に躍起だ。
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「医療機械や電気代が上がり、病院の経費が増えて、医者の給与は増えないような気がするんですよ」
『そうですよね』
「下手すりゃ病院倒産なんかも・・・」
『そうしたら医者の失業ですね。世も末ですわ』
「まあ医師免許は強いですから、無職にはならないと思いますけど」
『なんか医者の購買力って落ちそうですよね』
「ホント、そう思います」
『周りを見ていると羽振り良いドクターが多くて、全然心配していない風です』
「何か根拠のない自身にあふれてるって言うか」
『先が見えていないですよね』
「彼らも投資していれば、インフレでも酷い目に合わないと思うんですけど・・・」
まとめ
投資を始めたのは研修医時代だが、おもてだって口には出来なかった。
当時はバブル崩壊の煽りを受け、医者の投資は白い目で見られた。
時代は変わり、今は投資行動に追い風が吹いている。
投資の勉強も、本やネットを使ってやりやすくなった。
本当に良い時代になったと思う。
それでも実際に投資を行っている日本人は、2割程度。
ベテラン投資家は、もちろん損はイヤだが、マイナスを出したときは勉強するチャンスととらえている。
損のリスクは「クスリ」なのだ。
インフレが進む中、「投資をやらない」選択は、医者の生活水準を下げるリスクを伴う。
投資をやるのは自己責任だが、やらないのも自己責任。
「投資をやらないリスクって、ありますよね」
このコトバが身にしみた。